大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「花秋くん、大丈夫かい? 部下が手荒くしてすまないね」
「教授……なぜこのようなところにいるのですか? 教授は四條製薬を嫌っておられたはずです。ここはその四條製薬のグループ企業ですよ」
「四條製薬が嫌いというより、君を虐める四條隆文が嫌いなのだよ。でもそんなことは些末なことさ。今日は君に先日の返事を聞くために来たんだ。全然連絡を寄越さないので、心配したよ」

(返事を聞きに来た? でも私は普段はここにいないのに)

 ここに訪問したことを知らせた誰かがいるのだろうかと考えたところで、振り返り警備員を見る。篠原に脅されて侑奈を連れてきたのではなく、最初から彼の仲間なのだろうか。


「彼女は……教授の指示でここで働いているんですか?」
「ああ、そうだよ。今日も彼女の報告を受けて来たんだ。やはり潜り込ませておいて正解だった。お偉方は警備員の採用などあまり気にしないからね。簡単だったよ」

 そう言って嗤う彼に狂気的なものを感じて怯んでしまう。ここで感情的になるのは良くないと分かっているのに、「どうしてそんなに変わってしまったの?」と問い質したくなる。

 侑奈が何も答えないことに焦れたのか彼はピンク色の液体が入った小瓶を見せてきた。何かは分かっているが、知らないと思わせたほうがいいと考え、敢えてすっとぼける。

「これは?」
「神経毒だよ。花秋くんは確か毒物に詳しかったね。これは私が作ったのだが、思った以上に効果がきつく出てしまい少々困っているのだよ。ゆっくり人が壊れていくところが見たかったのにこれではいけない。君が調整してくれるかね?」

 そう言って手を差し出す彼に侑奈は瞠目した。体がわなわなと震えてくる。
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