大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「ひ、人を壊したいのですか? どうして? 教授はそんな方ではありませんでしたよね? 新薬の開発をしていると仰ったではありませんか」
「新薬の開発は隠れ蓑にすぎない。そんなものをつくっても大して金にもならんし名誉にもならん。それなら必要とされるところで役立てようと考えただけだよ」
「人を傷つけるものが必要とされるなんてあり得ません」
「花秋くんのような育ちのいいお嬢様には想像もつかないのだろうが、そういう場はいくらでもあるのだよ」

 篠原はとても楽しそうに自分の構想を語った。殺傷力が高いものと低いものを作り、兵器として活用したいと……

 さすれば大金が舞い込み、同時に地位と名誉が約束されると彼は言った。

(地位? 名誉? お金? そんなもののために多くの罪のない人を傷つけたの?)

「ただ壊すだけなら別に今のままでもいいんだが、生かして色々吐かせたいときなどにはこれでは困るのだよ。麻痺が重すぎて話せる状況じゃないんだ」
「だから私に微調整させたいと?」
「ああ、やってくれるかね?」

 本当はどこかで何かの間違いではないのかと、思いたかった。信じたかった。思い出の中の彼は研究熱心で誰かを傷つけるような人ではなかったから。
 侑奈の心に失望が広がっていく。侑奈はジッと彼を見据えた。
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