大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「教授……仲間を警備員として潜り込ませて、手引きさせたと言っていました。内部の人間が招き入れたら、そりゃ入れますよね……。でもセキュリティを見直して強化するのはいいことだと思います」
「篠原の言うとおり、警備員の採用に関して気を回していなかったのは事実だ。社員が安心して働けるように努めなければならないのに、あんな危ない男が容易く入り込めるほど杜撰なんて失態以外の何ものでもない」

 あのあと大々的に調べてみると今回の玲瓏薬品だけでなく、本社である四條製薬まで篠原の魔の手が伸びていたと隆文は言った。

(どうしてそこまで……私がどこに現れるか分からないから?)

 気に入った生徒には面倒見のいい先生だった。侑奈もとても良くしてもらったのを覚えている。だからと言って執着される理由が見当たらない。

(それに私が目的なら実家の病院にも手を回されていてもおかしくないわよね。四條製薬グループだけというのは……)

 そういえば篠原は隆文に敵意を向けていた。もしかすると、四條製薬に何か恨みでもあったのだろうか。


「隆文は教授がそこまでする心当たりとかありますか? 過去に……四條製薬と教授の間に何かがあったとか?」
「別にないよ。奴はうちに執着しているんじゃなくて侑奈にしているんだよ。侑奈が欲しくてたまらないんだ。俺のところに来てからは侑奈はほぼ実家に帰らずに俺の側にいるから、単純にうちに狙いを定めただけじゃないかな」
「それはないです。私にはそんな価値ないもの」
「あるよ。毒の知識と毒に耐性のある体。助手としても研究材料としても最適じゃないか」

(あ……)

 そういえば篠原は侑奈に手伝ってほしそうだった。
 隆文の言葉で篠原の言葉を思い出し、体が震えてくる。

「大丈夫。絶対守るから」
「はい。あ、そうだわ……私、教授にあの薬をかけちゃったんだけど、どうなりました? 経口からじゃないとやっぱり効果はなかったですか?」
「さあ……」
「ということは何も症状が出ていなかったということですよね。残念だわ」
「というより、カッとなってタコ殴りにしちゃったから正直分からないんだ。そのまま警察病院に運ばれていったし……。あとで確認しておくよ」

(え? タコ殴り?)

 あははと悪びれもなく陽気に笑う隆文に唖然とする。

(教授、大丈夫かしら……生きてる?)
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