大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「ねぇ、隆文……」
「ん?」
「無事に退院したら、お仕置きしていいですよ」
「は?」

 驚いたのか瞼を開けて、こちらを探るように見てくる隆文に気恥ずかしさを感じて目を伏せる。

(うう……自分で言い出したことだけど恥ずかしいわ……)

「ほ、ほら。私が失敗したらお仕置きするって話だったじゃないですか。今回壮大にやらかした自覚があるので仕方ありません。それに隆文を泣かせてしまった償いもしないと」

 それに怖かったことをすべて忘れさせてほしい。隆文の熱で全部塗り替えてほしい。侑奈が期待を込めて隆文を見ると、彼がフッと笑う。

「いや、お仕置きにならないだろ。侑奈は毒には強いかもしれないけど快感には弱いからな。ご褒美になっちゃいそうだけど?」
「ご、ご褒美だなんて……そんなことありません……!」
「あるだろ。俺に虐められるの好きなくせに。今だって自分からお仕置きをねだってさ。絶対Mだよな」

 とても失礼なことを言い出した隆文にくわっと目を剥く。侑奈が反論すると、さらに挑発的に笑われる。

(ムカつく……誰がMよ、誰が)

 ニヤニヤと馬鹿にしたような顔で見てくる隆文と暫し睨み合う。

 だが、先ほどまで元気がなかったくせに、いつのまにかいつもどおりの優しくて意地悪な隆文に戻っていて、なんだか笑ってしまう。

(ああ、幸せだなぁ)

 彼とこうしていると、日常が戻ってきたんだなと実感する。
 侑奈はクスッと笑って隆文にキスをした。そして額をコツンと合わせる。
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