大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜

拗らせた恋心(隆文視点)

 初めて見た侑奈の泣き顔は今も忘れられない――


「お前、悠斗の妹の侑奈だよな?」

 あのときは悠斗の妹が一人でつまらなさそうに遊んでいたのが気になって捕まえたばかりの虫を見せて一緒に遊ぼうと思っただけで、泣かせてやろうとか虐めてやろうとか……全く考えてもいなかった。

 正直虫が苦手などと思ってもみなくて、震えながらも隆文(自分)を拒絶した侑奈に、ショックを受けたのをよく覚えている。

 だからといって、ムキになったのが良くなかった。
 彼女より四つも年上の自分が引かなければならなかったのに、逃げ回る侑奈を追いかけまわし、結局虫以上に自分が嫌われる羽目になった。

 だが、やめられなかったのだ。
 こちらを見るときの涙をこらえている表情。とうとう耐えきれず泣いてしまったときの泣き顔。それらが途轍もなく可愛くて、構わずにはいられなかった。

 子供だったのだと思う。気のある子を虐めることでコミュニケーションをはかろうなど、愚かすぎるとも思う。
 分かっているのに、侑奈を見かけるたびに気持ちが抑えられなくて、毎回彼女を虐めてしまった。

 泣かせるたびにゾクゾクしたものが体を駆け巡り、何かが満たされた。だが、それと同時に好きな女の子との関係を壊しているのだと気がついたときには――侑奈と隆文の仲は修復不可能なくらい手遅れになっていた。
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