大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「侑奈、今までごめん。もうお前の嫌がることは絶対しないって約束するから仲直りしないか?」
「い、今、嫌なことしてるじゃないですか……」
「それは侑奈が、俺とちゃんと話をしてくれないからだろ」
「だって……貴方のこと嫌いだもの……」

 その言葉に怯んだ瞬間、侑奈が隆文の胸を思いっきり押しのけて、自分の部屋に駆け込んだ。その姿に心臓がドクンと跳ねる。

(……なんだこれ)

 胸がドキドキして苦しい。
 隆文は自分の胸元を掴んで、呆けたままふらりと椅子に腰掛けた。

「嫌い? 俺のことが……? 俺は好きなのに……」

 ふと出た自分の言葉にハッとする。その瞬間自覚したのだ。

「はっ、きつ……気づいた瞬間に失恋かよ」

 分かってはいたが、直接ぶつけられるとショックなものがある。が、それと同時に隆文の負けん気に火がついた。

(いや、諦めたくない。絶対好きだって言わせてやる!)

 そう思ってからは彼女に相応しい男にならなければと考え、女遊びをやめ、学校での勉強はもちろんのこと、祖母や父からの後継者教育にも励んだ。

 そして、これ以上関係を悪くしないためにも極力侑奈に会わないように気をつけた。会えないのは辛いが、悠斗に写真を見せてもらったり近況を教えてもらったりしたから我慢ができた。
 そうだ、頑張ったのだ。お互い成人して大人になれば、さすがに謝罪を受け入れてもらえると信じて――

(その考えは間違えていなかった……)

 ようやく彼女が歩み寄ってきてくれた。祖母に押し切られて断れなかっただけだろうが、隆文の人となりを理解しようと手を差し伸べてくれたのだ。

 なにごとも一瀉千里だ。
 彼女の気が変わらないうちに、何としてでもこのチャンスを掴み取ってみせる。

(侑奈、俺なら公私共に支えてやれる。だから、どうか今の俺を見てくれ)

 彼女に償いたい。許してほしい。
 その想いが堰を切ったようにあふれて、気がついたら彼女の手を取って立ち上がっていた。
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