大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜

やり直したい

「それで……どこに行きたいんですか?」

 私服に着替えてから、お屋敷の門の前で待っていた隆文を不満げに見つめる。

 彼はメイド長の荒井から侑奈の休みをもぎ取り、スピーディーに出かける用意を完了させた。
 そのうえ待ち合わせがしたいとか変なことを言い出して、門の前でそわそわと待っている始末だ。

(部屋で待ってればいいのに……変な隆文くん)

 再会してからの彼の態度が、思ったものと違いすぎて正直ずっと困惑してる。侑奈が小さく溜息を漏らすと、隆文が照れ気味に頭を掻いた。


「別にどこかに行きたいとかじゃなくて……」
「何ですか? はっきり言ってください」

 ごにょごにょと口籠る彼が焦れたく感じて、眉根を寄せて首を傾げる。すると、彼がとても真剣な表情(かお)で侑奈を見据えた。

「俺が馬鹿なことをしなかったら……幼馴染みの侑奈とできたことがしたいんだ」
「へ? 幼馴染みの私と……できたこと?」
「うん。たとえば……。俺たち実家が近所だから……学校帰りに偶然会って一緒に帰るとか。放課後待ち合わせして遊びに行くとか。ほかにも休日に一緒に散歩したり、どこかに出かけたり、そういうのをずっとしたかった」
「……」
「だから今日は車使わずに侑奈と……手を繋いで歩きたい……」

 そう言って、耳まで真っ赤にしながら侑奈の手を取る隆文に、強い衝撃を受けた。
 先ほど、ちゃんとしないと雇ってやらないと言った強気な態度は鳴りを潜め、今は不安げに侑奈の出方を窺っている。

(誰この人!?)

 大人になった彼はこんな感じなのかと、まじまじと見つめた。

「駄目か?」
「え? う、ううん、駄目じゃないです。じゃあ、まずは手を繋いでここら辺をお散歩しましょうか。それからどこに行くか決めましょう」

(彼と手を繋いで歩くなんて……なんか変な感じ)

 苦笑いを向けると、隆文が安心したように笑った。その表情が可愛く見えて、慌てて目を逸らす。

(……何!? 私……今何を思ったの?)

 目の前にいるのはいじめっ子だ。
 可愛いなんてあるわけがない。

(しっかりしなきゃ……)

 侑奈は気を引き締めて、彼と手を繋いだまま歩き出した。
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