大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
 謝罪を聞いたって何も変わらないと決めつけていた。人は簡単には変われないと……
 でも子供が大人へと育つ時間はあっという間のようで長く貴重だ。体が成長するように心だって成長する。色々な変化をもたらすだろう。

 いつまでも子供のときのままではいられないのに、ずっと彼は子供のときのままだと拒絶していた。

(私、最低だ)

「私こそすみませんでした。変な意地を張って、貴方の謝罪を受け入れなかった。ほんの少しこうして話すだけで、それが間違いだったと分かるのに……今は愚かだったと思っています」
「侑奈は何も悪くないんだから謝らないでくれ。俺は侑奈を怖がらせてトラウマを植えつけたんだ……。恐怖なんて中々消えるものじゃない。決して愚かなんてことないから、気にしないで。それに大人になったからこそ、分かることもある。俺たちには時間が必要だったんだと思うよ」

 後悔の滲む声に、胸が締めつけられる。苦しくて胸元をぎゅっと掴んだ。

 今ここで口に出したことが隆文のすべての思いではないだろうが、それでも彼を信じてみたいと思った。
 彼はもう侑奈の知っている隆文ではないはずだ。

 それでも――まだ怖さは完全に拭えないが、歩み寄ってもいいのかもしれない。四條隆文という人をもっと知るために。


「私たち……やり直しましょうか」
「え?」
「幼馴染みの私たちがするはずだった色々なことをしてみて、歩み寄ってみようって言ったんです。その努力をしてみても無理なら仕方ないですが、まずはやってみなきゃ何も分かりません」
「侑奈……」
「言っておきますが、これは別にちゃんと貴方を見て判断しないと雇わないって言われたからじゃありませんよ。貴方の謝罪と後悔を受けて……まずは努力をしてみたいと素直に思ったんです」
「ああ、分かってるよ。ありがとう。絶対侑奈に好きって思ってもらえるように頑張るから」
「期待してます」

 そう笑い合ったあとは、ショッピングや食事に行った。
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