大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜

母屋の一室

「あらあら、甘酸っぱいこと。坊ちゃんったら、思ったより純粋なのね」
「そうですね。ちょっと意外でした」

 翌日。報告がてら荒井に昨日のことを話すと彼女が満面の笑みを浮かべたので、侑奈もつられて笑ってしまう。

(長年怖がってたのが馬鹿みたいだって思えるくらい、昨日の隆文くんは優しかったな)

 すごく緊張していて気遣ってくれているのが伝わってきて、侑奈を苦しませたいじめっ子とは別人に見えるくらいだった。

 侑奈が昨日のことを思い出しながら、隆文に取ってもらった子犬のぬいぐるみを見せると、荒井が涙ぐむ。


「あ、荒井さん……?」
「ごめんなさいね。坊ちゃんが後悔していたのは知っていたし、挽回するために色々と努力をしていたのも見ていたから、すごく嬉しくて……。ありがとう、花秋(はなとき)さん」
「いいえ、私のほうこそずっと変な意地を張っていてすみませんでした」

 安堵の声を出し深々と頭を下げる荒井に、慌てて首を横に振る。彼女の嬉しそうな表情に、本当に隆文のことを可愛がっているのだなと思った。

(荒井さんは隆文くんが小さなときから見ているのよね……)

 それなのに隆文だけの味方をせずに中立の立場で見守ってくれている。優しい人だなと思いながら、侑奈はニコリと微笑んだ。

「色々と時間がかかりましたが、今後は少しずつ歩み寄っていければと思います」
「ええ。焦ってもいいことないものね。しばらくは二人で学生時代のやり直しデートでもしているのが、ちょうどいいかもしれないわ」

 そう言って微笑を浮かべる荒井に頷くと、彼女が「あ!」という声を出した。その声に目を丸くする。

「どうしたんですか?」
「えっと……侑奈ちゃんをいつまでも使用人棟に置いておきたくないって、坊ちゃんが母屋にお部屋を整えようとしているのよ……。昨日の今日で、ちょっとせっかちすぎよね……」

(え……!?)

 困り顔で笑った荒井の言葉で母屋まで走っていくと、隆文が本当にインテリアコーディネーターを招いて話をしていた。

(あ! いた!)
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