大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
 ***

 ――数日後。

「侑奈ちゃんったら、母屋に移ったんですって。隆文と結婚する気持ちになってくれたと思っていいのかしら?」

(やっぱり来た……)

 嬉しそうな声と共に帰宅した玲子に、侑奈は苦笑いをした。

「そういうわけじゃなくて……あの部屋が……」
「あの部屋?」
「玲子さんの旦那様が昔使われていた部屋をいただいたんです。あまりいい思い出がなかったから、私が使って塗り替えてほしいって隆文くんに頼まれて……」

 誤解がないように隆文に聞いた話ごと報告すると、玲子がキョトンとした。

(喜んでくれるといいんだけど……)

 その表情に不安になって侑奈が落ち着かない素振りで彼女の様子を窺っていると、突然クスクスと笑い出す。

「いやだわ、隆文ったら。そんなこと言ったの」
「えっ!?」
「あの人の部屋が残っていたなんて、今知ったわ。そう、あの部屋がそうなのね……」

 そう言って笑い出す玲子に口をぽかんと開けたまま固まる。

「政略結婚だったし、特段何も感じなかったわ。なによりもう米寿を過ぎたおばあちゃんなのよ。気にしてるわけないじゃないの。隆文ったら可愛いところがあるんだから」
「……」

(そ、そうよね。それに四條のお屋敷は広くて部屋もたくさんあるんだもの。わざわざ片づけなくても困らないわよ)

 クスクス笑う玲子に侑奈が顔を真っ赤に染めて俯くと、彼女が侑奈の肩をポンッと叩いた。

「あの部屋は隆文の部屋からも近いし、以前の貴方ならその理由を聞いても絶対に嫌がったでしょ。仲良くできているようで安心したわ」
「わ、私……」
「心配は杞憂だったようね。この調子なら良い報告がすぐ聞けるかしら?」

(た、隆文くんの馬鹿! はやとちり!)
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