大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜

祖父の言葉

「平和だなぁ」

 庭師の手伝いで、庭の花に水をあげながら空を仰ぐ。

 母屋に部屋を用意されて最初はどうなることかと思ったが、この一ヵ月――とても穏やかに過ごせている。

 それに隆文はどれだけ忙しくても毎日挨拶をしてくれる。出るのが早過ぎたり帰るのが遅過ぎて言えないときは、メッセージアプリで伝えてくれるのだ。律儀だなぁと思いつつも何気にこのやり取りを楽しんでいる自分がいる。

(隆文くん……忙しいのに私のために時間を作ってくれてるのよね)

 隆文は忙しいのであまり休みを取れないのだが、早く帰れたりすると部屋で一緒に映画を観たり、庭を散歩したり、二人の時間を積極的に持とうとしてくれる。

 正直すごく大切にされているのが分かって、少しくすぐったい。彼は言葉にこそしないが、態度がすべてを物語っている。
 自分を見つめる熱い眼差しを思い出して、カァッと顔に熱が上がった。

 満更ではないと思ってしまっているのだ。
 侑奈は花にあげていた水を止め、かぶりを振った。

(うう、困るわ……)

 婚約の話が出たときも相当戸惑ったのに、その相手が記憶とまったく違って優しく穏やかなのだ。こんなの困惑を通り越して動揺しかない。
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