大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「私と結婚したら四條製薬の社長になれるのに……」
「は? 社長?」
「玲子さんが引退するってことはそういうことでしょう?」
「あのな、残念ながら会長が引退したからって、はいそうですかって簡単には繰り上がれないよ」

 隆文は、親族といえど責任あるポストに就任するには総会で一定以上の支持が必要だと言った。

(確かに結果を出さなきゃ、皆が納得しないのは分かるけど……)

 だが実際、玲子の言葉は何より大きいはずだ。

 侑奈はこわごわと隆文の顔を見た。

「じゃあ、私たちの婚約は本当に隆文くんの出世とかには関係ないんですか?」
「ないよ。侑奈があと五十年答えを出せなくても、俺は俺なりに結果を出してのぼり詰めるつもりだから、何も気にせずのんびり考えればいい。信じられないなら、ばあさんにも聞いてみるといいよ。侑奈を傷つけて強引に嫁にもらっても嬉しくないって絶対に言うから」
「そうですか。ありがとうございます……。でも五十年だなんて……いくら私でも、そこまでは待たせません」
「そう? なら、期待して待ってようかな」

 くつくつと笑いながら、侑奈の頭を撫でてくる隆文に、胸がじんわりと熱を持ってくる。

 政略結婚は両家にとって必ずメリットがあるはずだ。だから関係ないなんてことないだろう。

(私がこれ以上気にしないように言ってくれてるのよね。優しい人……)

「安心したらお腹空きました」
「なら、どこかに食べに行くか? 近くに美味い店があるんだ」

 エヘヘと笑うと、手を取って笑いかけてくれる隆文にニコリと頷く。
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