大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
 隆文は何でもないことのように話しているが、侑奈は動揺と羞恥で消えたいくらいだった。が、そんな醜態を晒したのにも関わらず、彼は馬鹿にしたり嗤ったりしないで、心配してくれている。

(最悪……)

 自責の年に駆られながら、隆文が先ほど渡してくれたペットボトルを見つめた。

「迷惑かけてごめんなさい」
「何言ってんだ。いずれ結婚するんだから迷惑も何もないだろ」
「け、結婚!? 私……そんなのまだ決めてなっ」
「それは分かってるけど。俺は侑奈しか考えられないから何年でも待つつもりだし、最終的には夫婦になるだろ」

(~~~~っ!)

 彼の真剣な眼差しに射貫かれる。侑奈はけたたましい鼓動を誤魔化したくて、話題を変えた。


「そ、そんなことより……昨日のお礼をしたいので何か考えておいてください」

 隆文の顔が見られない。
 侑奈が視線を彷徨わせながらそう言うと、隆文の顔がぱあっと輝いた。

「え? 何でもいいのか?」
「私にできることなら……。あ、でも婚約とか結婚しようというのはなしですよ」
「それは分かってるよ。じゃあ、呼び捨てで呼んでほしい」
「は? そんなこと?」

 あまりにも簡単なお願いに呆気に取られる。侑奈が驚いていると、隆文が「言っとくけど重要なことだからな」と拗ねた表情(かお)をした。

(そんなものはお礼にならないわ)

「それはお礼ではないから別のものにしてください。これからは隆文って呼びますから」
「本当か? ありがとう、すごく嬉しいよ」

 感動に震えている隆文に、つい笑ってしまう。

(こういうところは可愛げあるのよね)
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