大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜

昨日のお礼②(隆文視点)

 夜遅く家に帰った隆文は自室に入り、腕時計を見て溜息をついた。

(侑奈はもう寝たよな……)

 メッセージアプリでやり取りをしたときは話があるから起きて待っていると言っていたが、もうすぐ日付けが変わる。メイドの仕事は朝が早いので、待ってなどいられないだろう。

(一緒に住んでても顔を合わせられる時間って限られてるよな……)

 少し寂しくはあるが、今は侑奈がうちでメイドをしているので時間を合わせやすいほうだとは思う。だが、彼女も外で働きはじめたらそうはいかないだろう。

「……いや、待てよ」

 またもや漏れ出た溜息と共に違う考えが脳裏をよぎった。

(同じ会社で働けば、一緒に通勤できるし、勤務中に会うこともできるよな……。それに会社へのアクセスの良さを理由に一人暮らしをしてるマンションに彼女を呼ぶことも可能じゃないのか?)

 いずれは母体企業である四條製薬の研究所へと考えていたが、隆文が今任せられている開発系の医薬ベンチャーのほうに呼んでも何ら問題はないはずだ。

(……成績証明書や侑奈が書いた論文などを見させてもらったが、とても優秀なようだし、何より頑張り屋だから、下心を抜きにしても欲しい人材だとは思う)

「……ただ、この私情だらけの人事をばあさんが許してくれるかだよな。いやでも、先に私情を挟んで侑奈と取り引きしたのはあの人なんだし、そこを攻めればいけるか?」

 祖母を口説き落とす言葉を考えながら、ジャケットを脱ぎネクタイを緩め、ノートパソコンの電源をつける。そして侑奈に関する資料を閲覧しようとしたとき、コンコンと部屋のドアがノックされた。

(……こんな時間に誰だ?)
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