大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「どうぞ」
「失礼します……」
「侑奈……。お前、まだ寝てなかったのか?」
「起きて待ってるって言ったじゃないですか」
「そうだけど……。朝早いのに寝ないで平気か?」

 ドアから顔を覗かせる侑奈に驚くと、彼女が気まずそうな表情で中に入ってきた。こんな時間まで起きていることが心配なのに、彼女の顔を見るなりどこかホッとしてしまう。

(好きな人って……顔を見るだけで癒しになるんだな。それにパジャマ姿が何とも言えないくらい可愛い)


「大丈夫です。そ、それに今日は隆文のおかげでゆっくり眠れたので、元気なんです」

 エヘヘと笑った侑奈に目を見張る。
 今朝お願いしたとおり呼び捨てで呼んでくれていることに感動を覚えた。

(すげぇ、嬉しい。今ので疲れが完全に吹き飛んだ)

 関係を進展させるためにも呼び方を変えたほうがいいかと思ったが、予想以上に嬉しいものがある。
 顔を綻ばせて侑奈を見つめていると、目が合った彼女が眉尻を下げた。それにどうにも表情が固い。

(やっぱり無理しているんじゃ……?)


「侑奈、話は明日にしてもう寝……」
「キスしませんか?」
「は?」

 あまりにも突拍子のない言葉が飛び出して、思わず素で聞き返してしまう。

(今キスって言ったか? いや、そんなわけない……聞き違いだ。そうに決まっている)

 都合のいい自分の耳を疑っていると、侑奈が再度「昨日のお礼に……キスしませんか?」と言ってくる。その言葉に一瞬時が止まる。

(は……お礼?)
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