大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「ごめん。言いすぎたよな? 大体俺がやりたくてやっただけで、お礼なんかする必要ないのに、無理をしてほしくないんだ。頼むから自分を大切にしてくれ」
「無理なんてしてませんし、投げやりになった行動でもありません。あくまで冷静に考えた上での判断です」
「どこかだよ」

(本気で軽くキスするだけですむとでも思ってるのか……? すむわけないだろう。理性飛ばす自信しかねぇよ)

 深く口づけて口内を犯し尽くしたい。
 口だけじゃない。余すことなく全身にキスしたい。

 彼女は隆文の劣情(それ)を分かっているのだろうか? いや絶対に分かっていない。分かっていないからこそ、簡単なことのように言えるのだ。
 隆文が大きな溜息をつくと、今まで怖い顔をしていた侑奈が突然ふふふと笑い出した。

「真面目で律儀なのは隆文のほうですよ」
「は?」
「昨日のお礼を免罪符に好き放題キスできるのに、そうしなかった。むしろ私のことを思って叱ってくれたんですから、充分真面目かと。ねぇ、隆文。再会してからの貴方が優しい人だというのはよく分かっていますし、とても大切にしてくれているのも分かっています。だからこそ私は……」

 侑奈はそこで言葉を切って、隆文にキスをした。それは押しつけるだけの不器用なものだったが、確かに彼女の体温を感じた。

(――っ!)

 全身の血液がカァッと熱くなる。そう感じた瞬間、もう止まれなかった。気がついたら噛みつくように彼女の唇を奪っていた。
< 41 / 127 >

この作品をシェア

pagetop