大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「仕事後に横浜まで呼びつけて悪かったな。迷わなかったか?」
「え? はい。運転手の坂本(さかもと)さんがここまで送ってくれたので、大丈夫でした」
「それは良かった」
「良くありませんよ。最近、休んだり早く上がらせてもらったり……皆さんに迷惑をかけている気がします」

 侑奈の契約内容は――隆文の世話を中心に、空いている時間でメイドの仕事をすればいいというものなので、何も気にすることはないと荒井は言うがやはり気にしてしまう。

(世話って言っても、実際は隆文の部屋の掃除くらいしかやることないし……こうして二人の時間を持つのはある意味遊びだし……世話とは言えないわよね)

 というか、どちらかといえば世話をされているのは自分のほうだと思う。


「そんなの気にしなくていいよ。侑奈の仕事は俺との仲を深めることだろ」
「それはそうかもしれませんけど……メイドとして入ったからには、やるべきことはしないと……」
「相変わらず真面目だな」

 小さく溜息をつくと、隆文がくつくつと笑いながら頭をポンポンしてくる。薄く睨んで、彼の手をやんわりと払った。

「で、どこに行くんですか?」
「俺が住んでるマンションかな。一度侑奈を招いてみたいと思ってたんだ」
「へぇ、それは楽しみですね」

 少しぶっきらぼうに訊ねれば、隆文が少年のような笑顔で答えてくれる。その表情に、なんだかむず痒くなった。

(そういえば、本当は会社の近くに住んでいたのよね……)
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