大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
 どんな部屋に住んでいるのか楽しみだなと考えていると、歩いて数分のうちに繁華街の一等地にあるおしゃれなタワーマンションが見えてきた。

(わぁ、すごい。ホテルのエントランスみたい……)

 中に入ると素敵なラウンジが目に飛び込んでくる。侑奈がキョロキョロしていると、コンシェルジュが「お帰りなさいませ」と会釈してくれた。

 侑奈も同じようにぺこりと頭を下げ、隆文に連れられるままにエレベーターに乗り込む。


「実家を出て暮らすのって、なんだかいいですね。憧れます」

 医師である兄は働いている病院の近くで一人暮らしをしているが、侑奈はまだしたことがない。だから、自分だけのお城というのは少し羨ましい。

(でも今回のことで実家を出られたおかげで、色々な経験ができている気がするわ)

 ふふふと笑って、隆文を見た。

「侑奈は一人暮らしをしたことがないんだっけ?」
「ええ。結婚前に変な虫がついてはいけないと、おじいさまが心配なさるので……。でも四條のお屋敷で働かせてもらえるようになってから、自由が増えたんですよ。やっぱり一度は実家を出てみないと……」

 興奮気味に話していると、隆文が抱きついてくる。突然感じた彼の体温に侑奈の体が大きく揺れると、頭のてっぺんにキスされた。

「侑奈のおじいさんって、頭固いってのもあるけど、侑奈にはかなり過保護だよな」
「はい。大切に想ってくださるのは有り難いんですが、本音を言うと……少し窮屈なこともあります」

 久しぶりのスキンシップにドキドキしながらも、苦々しく笑う。

 同世代の皆が許されていることが自分には許されない。大学進学だって、兄や祖母、両親が祖父を説得してくれなかったら絶対不可能だった。

(私が愚図なのがいけないんだけど……、それでも信用されていないのはやっぱり寂しいわよね)
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