大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜

隆文のマンション②(隆文視点)

「さて。じゃあ、夕食にしようか。俺が作るから、侑奈は寛いでて」
「え……料理できるんですか?」
「一人暮らしが長いんだから、それくらいできるよ。そういうお前こそどうなんだよ」

 キッチンに入り、そう声をかけると侑奈が小首を傾げてくる。驚いている姿は可愛いのだが、なんだか馬鹿にされている気がして少しムカつき、侑奈の両頬を軽く摘んだ。すると、彼女がジタバタと暴れて隆文の手の中から逃げる。

「わ、私もできます。料理したりお菓子を作ったりするのは好きなので」
「それはいいな。今度食わせてくれ」

 手を伸ばしてまた頬に触れると、侑奈の体が分かりやすく跳ねる。一歩後退って隆文と距離を取るその姿はまさに敵を警戒する小動物のようだった。

(こういうところなんだよな)

 本人は精一杯の抵抗のつもりなのだろうが、侑奈の反応が可愛すぎて、さらに虐めたくなる。だが、それではいけない。欲望を抑えられない子供ではないんだと自分を戒め、冷蔵庫へと視線を移した。

(はぁっ。付き合えたとはいえ、がっつくのはよくないと我慢してるが……そろそろ無理そうだ)

 隆文は心の中で深い溜息をついて、侑奈に声をかけた。

「とりあえず座って寛いでいてくれ。今夜は俺が作るから……って、あれ?」

 だが、彼女はいなかった。
 先ほどまで隣で警戒心を剥き出しにしていたのにどこに行ったのだろうか? と、キョロキョロと視線を動かす。


「侑奈、どこ行った? まさか拗ねたのか?」
「あ、ごめんなさい。今着替えてるので、ちょっと待っていてください」

 少し大きな声で侑奈を呼ぶと、彼女の部屋から呑気な声が聞こえる。手伝うつもりでエプロンでもつけているのだろうかと考えながら、冷蔵庫を開けた。

(手伝ってくれるつもりなら、あれを頼もうかな……)

 侑奈への気持ちを自覚した十八歳の夏に、彼女が作っていたフレーバーウォーターを思い出しながらミントの葉に手を伸ばす。

(いらないからやるとは言われたけど……結局申し訳なくて、そっと冷蔵庫に戻したんだよな)

 だが、今は違う。今は――一緒に過ごしたりこうしてお泊りに誘ったりしても嫌がられない仲になれた。だから絶対作ってくれるはずだ。

 隆文は冷蔵庫からミントの葉と炭酸水、それから葡萄や苺などのフルーツを取り出した。
 入っていたのは葡萄だったはずだが……ネットで調べると好きなフルーツで作ればいいと書いてあったので、何種類か用意したのだ。

(侑奈の今の気分で使うフルーツを選んでもらえばいいかな)
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