大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「お待たせしました」
「侑奈。もしよかったら……」

(え……)

 そのとき、メイド服姿の侑奈がキッチンに入ってきて、一瞬時が止まる。

(え? なんでメイド服着てるんだ? ツッコミ待ちか? それとも俺に襲ってほしくて?)

 色々な感情がぐるぐると頭の中を巡ったが、自分の口から出てきた言葉はシンプルな疑問だった。

「どうしてメイド服?」
「だって制服ですし……お料理するなら着たほうがいいと思ったんです。駄目でしたか?」
「だ、駄目じゃないけど……まさか屋敷の外で着てくれるとは思ってなくて、ちょっとびっくりした、かな」

 動揺混じりにそう答えると、侑奈がはにかんだ。

(今までうちの屋敷の制服をエロいなんて思ったことなかったけど、やっぱり好きな子(侑奈)が着ると破壊力抜群だよな)

 隆文は今すぐ抱き締めたい衝動を抑えながら、侑奈を見つめた。が、彼女はそんな隆文の胸中などまったく気づかずに、無邪気に笑いかけてくる。

「それで、私は何をしましょうか?」
「え、えっと……じゃあ、フレーバーウォーターを作ってくれないか? 今から作っておいたら風呂上がりに飲めるよな?」
「フレーバーウォーター? わぁ、懐かしいですねぇ。これ、覚えてますか? 昔、学校から帰ってきたら隆文が私の作ったやつを強奪してた……」
「違う!」

 クスクスと思い出し笑いをはじめた侑奈の言葉を間髪入れずに否定する。キョトンとした侑奈に驚愕の視線を向けた。


「え? 俺、無理矢理奪ったと思われていたのか?」
「違うんですか? てっきり知らない間になくなったことに困惑する私を見たいがための嫌がらせかと思ってました」

 あまりの衝撃に絶句する。が、それと同時に、あのときの彼女の激しい拒絶の理由を理解した。

(意地悪で飲んだと思われてたのか……)
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