大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「侑奈」

 侑奈が肩までお湯に浸かり目を瞑ったのと同時に隆文の声が聞こえてきて、パッと目を開ける。

「えっ!? は、はい!」

 無防備でいるところに突然彼の声が聞こえて緊張が走る。入ってきたらどうしようと、侑奈は再度膝を抱えて縮こまった。

「邪魔してごめん。タオル、ここに置いとくから」
「あ、ありがとうございます」
「あと、もしよければでいいんだけど……お風呂後……」
「なんですか? よく聞こえません」

 きっぱりと言い切らない隆文がじれったく感じ、侑奈は首を傾げた。湯船から半分体を出し、ドアに顔を近づけ耳を欹てる。

「もしよければ、このあともメイド服を着てほしいんだけど……」
「は? どうしてですか?」
「嫌なら別にいい」

 これから寝るだけなのに、なぜ制服を着る必要があるのだろうか。侑奈が眉根を寄せると、隆文は質問には答えず逃げるように洗面脱衣所から出ていった。

(どうして着てほしいのかしら……)

 お湯に浸かりなおして、思考を巡らせる。そのとき、はたと気づいて顔にボンッと火がついた。

「ま、ま、まさか……そういうプレイがしたいとか?」

 口に出すと、さらに変な気持ちになる。
 侑奈は顔を半分お湯につけて、「へ、変態」と独り言ちた。その言葉がお湯に呑み込まれてブクブクという水音に変わる。
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