大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「……うう」

 緊張した面持ちでお風呂を出た侑奈は、隆文が用意してくれていたバスタオルで体を拭いた。洗った髪を手早く乾かして、先ほど脱いだばかりのメイド服に手を伸ばす。

(着てあげたほうがいいのかな)

 そのとき、ふと鏡に映った自分の顔が視界に入り、わずかに息を詰めた。

 鏡には頬を上気させた自分が映っていたのだ。

 恥ずかしくてたまらないのに、隆文との夜を期待している自分が確かにいる――それを理解して、侑奈はぎゅっとメイド服を抱き締めた。

(も、もう……私ったら。何を考えて……。ちょっと落ち着こう。落ち着かなきゃ)

 今以上に心臓がけたたましく鼓動するのを感じ、侑奈は深く息を吐いた。そして意を決してメイド服を着てから脱衣所を出る。


「お風呂上がりました」

 隆文が待っているリビングへ向かい、ドアから顔だけを覗かせて声をかけると、真剣な表情でパソコンの画面を見ていた彼が顔を上げ、手招きをして微笑んでくれる。

「そんなところにいないで入ってこいよ。湯冷めするぞ」
「は、はい……」

 メイド服を着ている自分が恥ずかしくて、赤い顔を隠すように俯いたまま、そそくさと隣に座る。すると、隆文がぴしっと固まった。

 お願いはしたが、まさか着てもらえると思っていなかったのだろう。
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