大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「……玲子さん。私たちは、私たちのペースで進むので、もう少し見守っていてくださいませんか? 今は婚約とか結婚とか考えずに、まずは付き合ってみたいんです」
「あら、そうなの? でも婚約くらいはしておいたほうがいいと思うわよ。そのほうが何かと便利だし」
「え……便利?」

 侑奈が目を瞬かせると、補足するように玲子が言葉を続けた。

「これは私たちの勝手な都合なんだけど、侑奈ちゃんがうちの会社で働くにあたっても、両家の事業についても、隆文の婚約者という立場のほうが助かるのよ」
「事業って……私たちやっぱり政略結婚なんですか?」
「いいえ。婚約してくれるなら結びつけやすいってだけで、貴方たちがどうこうならなくても、うちと花秋家はこれからも仲良くやっていくつもりよ」

(そっか……そうよね。良かった……)

 隆文同様――政略結婚ではないときっぱり言い切ってくれた玲子に、ホッと息をつく。

「それに付き合っているなら、今後は隆文のパートナーとしてパーティーに出てもらうことになるし、やっぱり婚約者のほうがいいわよ。言っておくけど、私の孫はものすごくモテるのよ。婚約者として睨みを利かせたほうがいいんじゃなくて?」
「え……」

 挑発的に笑った玲子に、心臓がドキリと跳ねる。
 だが、彼女の言うとおり確かに隆文はかっこいい。容姿端麗な上に、めちゃくちゃ気がきくし優しくもなった。そのうえ家柄もいいときている。

(そうだよね……今の隆文、紳士だしすごく素敵だし、そりゃモテるよね)
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