大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「隆文……。お兄様と仲がいいからって何でも話さないでください。全部玲子さんに筒抜けですよ」
「ん? いや、全部は話してないよ。侑奈が俺と喋ってくれたとか笑いかけてくれたとか、そういうことくらいかな」
「それだけじゃなく週末泊まったこともバラしたでしょう。まさかエッチしたことは言ってませんよね?」

 もしもそんなことまで話していたら許してやらないという目で睨むと、隆文は肩を竦めて食事に箸を伸ばした。

「マンションに泊まりにきてくれたってことは話したけど、さすがに俺でもそこまでは……」
「ならいいです。でも、今後は兄には何も言わないでくださいね」

 ジットリとした目で見ると、彼は「分かった分かった」と頷きながら笑う。

(本当に分かっているのかしら)

 大きな溜息をついて侑奈も食事をはじめた。

「別に隠してないんだからいいだろう? それに俺との婚約を了承したってことは、ようやく俺のこと好きになってくれたってことなんだから、少しくらい惚気させてくれよ」
「惚気ちゃ駄目です。それに隆文のことは好きだけど、まだよく分かりませんし……」
「あの日から毎晩、俺とのセックスを受け入れておいて往生際悪いな」
「うるさいです。私が婚約の話を受けたのは玲子さんが……」
「ばあさんが?」

 侑奈は今日玲子と話したことをすべて隆文に伝えた。すると、彼が目を丸くしたのち、肩を震わせて笑い出す。

 今の話のどこに笑うところがあったのかと、隆文を睨むと彼が侑奈の背中をポンポンと叩いた。それが地味に苛立ちを誘う。

「笑わないでください、ばかふみ」
「侑奈は本当に可愛いな。そんなこと言われて、ばあさんに同情したんだ?」
「同情だなんて……。私はただ……大好きな玲子さんが悲しんだり残念に思ったりするのを嫌だと思って……」

 それに今となっては隆文以外の人との結婚は考えられないし、玲子の孫になりたいとも本気で思う。だからこの機会に婚約を受けてもいいかなと思えたのだ。

「メイド仲間の皆さんからも祝福や応援もしていただいたんです。だから私……」
「ばあさんや同僚の思いを汲んで俺と婚約してやろうって? 随分と優しいんだな」
「隆文?」

 侑奈の言葉を遮った隆文の声が機嫌悪そうに感じて、侑奈はたじろいだ。様子を窺うようにおずおずと彼を見る。
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