大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「おかえり。侑奈が僕に会いたいって言ってくるなんて珍しいね。どうしたの? ホームシックとか?」
「ただいま。それもあるけど、誰かさんが隆文から聞いた話を玲子さんに話しちゃうから文句を言いにきたの」
「ごめんごめん。決まって忙しいときに電話がかかってくるから、つい」

 あははと笑う兄に、深い溜息をつく。
 それはおそらく玲子の策略だろう。長電話を嫌う兄がさっさと情報を渡すと踏んで、わざわざ隆文ではなく兄に電話をかけているのだ。


「忙しいから今は話せないって、電話を切っちゃえばいいのに」
「そういうわけにはいかないよ。侑奈だって玲子さんからの連絡は無碍に扱えないだろう?」
「それは……」

(そうだけど……)

 侑奈が言葉を詰まらせると、兄は部屋で話そうと言って手招きをした。自室へ向かう兄の後ろをついていきながら声をかける。

「でもお兄様こそ珍しいね、普段は私が会いたいって言ったくらいじゃ帰ってきてくれないのに……。本当のところ、どうしたの? とうとうおじいさまの雷が落ちたとか?」
「ははっ、まさか。三ヵ月後にあるパーティーのために帰ってきたんだ。衣装を新調したいって母さんがうるさくて」
「ああ、なるほど。私もそろそろ採寸や衣装選びをしようって、お母様から言われたわ。でも玲子さんが全部用意してくれるらしいから、私は採寸だけで良さそうよ」

 今回の四條製薬のパーティーは講演会後に行う懇親会とIRを兼ねているので盛大だ。色々な企業の重鎮や大きな病院のドクターも招かれている。

(確かそこで私たちの婚約発表もする予定なのよね)

 やっぱり兄は自分の願いで帰ってきてくれたんじゃなかったんだなと複雑な気持ちになりながら、侑奈は兄を見た。すると、部屋に入った兄が机の引き出しを開けて何枚かの写真を取り出す。
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