大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「お詫びにこれあげるから、今後も玲子さんに話しちゃうのは大目に見てよ」
「何それ?」
「高等部のときの文化祭の写真だよ。侑奈、誘ったのに来なかったでしょう。今は隆文と仲良くしているみたいだし、学生時代の隆文の写真をあげるよ」
「ありがとう……っ!」

 玲子のことを無碍に扱えないのは侑奈も同じなので仕方がないかと考えながら渡された写真を受け取った途端、視界に飛び込んできたものにプハッと噴き出してしまう。

 写真には隆文が女装している姿が写っていた。隆文がめちゃくちゃ嫌そうにしているのが絶妙に笑いを誘う。

「な、なにこれ……。隆文がセーラー服着てる……!」
「二年生のときの出し物で女装カフェをしたんだ。隆文はスケバン、僕はギャルだったかな」
「本当だ! わぁ、すごい!」

 兄の言葉でほかの写真も見ると、恥ずかしがっている隆文とは違い、ノリノリの兄が写っていた。

 侑奈はそれを見てお腹をかかえて笑った。

「やだもう、こんなに楽しいことをしているなら呼んでよ」
「何度も誘ったよ。でも隆文がいるからって、うちの学校の行事には一切来なかったじゃないか」
「そうだったっけ?」

 そういえば初等部までは兄たちと同じ学校だったが、隆文から逃げるために外部の女子校に進学してからは近寄ったことがなかったなと侑奈はぼんやりと考えた。

 それにしても女装している兄はとても美しく、その自信満々な表情がなんとなく苛立ちを誘う。

(女装してるお兄様って、私より綺麗……なんかムカつく)

 その後、侑奈はちゃんと休めるときに休んでねと兄に苦言を呈し、この写真で隆文を揶揄おうと足取り軽く四條の屋敷に戻った。
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