大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「時代がバラバラに保管されていて、いまいち分かりづらいから気をつけてね」
「はい」
「鹿鳴館のパーティーで玲子さまのおばあさまが着たドレスもあるらしいのよ。あ、これ当時の写真がおさめられたアルバムよ」
「わぁ! 玲子さんのおばあさまも綺麗な方だったんですね」

 上原が開いたアルバムを興味津々に覗き込み、侑奈は感嘆の声を上げる。

 そこには玲子の祖母が、凛とした表情で写っていた。西洋のドレスと日本の着物の美しさが見事に融合した夜会服が、より彼女の魅力を引き立てているように見える。カラー写真だったら、さらに美しさが手に取るように分かっただろう。

(隣に写っているのが玲子さんのおじいさまかしら。隆文にめちゃくちゃ似てる……)

 隆文からすれば高祖父にあたるのだから似ていて当たり前なのだが、それにしてもよく似ている。
 侑奈はアルバムのページを捲りながら、ポツリとこぼした。

「思い出深い品を、こんなところで眠らせておくのはもったいないですね」
「それはそうだけど……しまっとかないと、母屋のほうが片づかないから仕方ないわよ」
「まあ確かに……」

 ちなみに我が家にあった資産価値のある着物やドレスは、家業を始めるときにお金に変えたり、美術館や博物館などに寄贈したりしたらしく残っていないと祖母が言っていた。

(少しくらいは残しておいて良かったのにと思うけど……)

 祖父母の大切な品は後世に残せたらいいなと考えていると、上原が興味津々な表情で侑奈の肩を叩いた。
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