大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「あ、あれ?」

 落ちる覚悟をしたのに全然痛くなかった。
 おそるおそる目を開けると、隆文が抱きかかえてくれていた。その光景に慄く。

「驚かせた俺が悪かったけど、頼むから暴れないでくれ。怪我をする」
「ご、ごめんなさい……」
「それより何してたんだ?」
「えっと……蛍光灯が切れちゃったから交換しようとしていたんです。でもうまく出来なくて」

 普通に話しかけてくる隆文に、ジッと彼を見つめる。

(……私だって気づいていないのかな。そうよね。やっぱり何年も会っていない上にメイド服姿だものね)

 ホッと胸を撫で下ろすと、隆文がおろしてくれる。彼は壁に立てかけてある新しい蛍光灯にチラリと目をやって、倒れている椅子を起こし上に乗った。

「この蛍光灯は……蛍光灯のみを九十度横に回転させて外すんだ」
「そうなんですね」

 だから引っ張っても外れなかったわけだ。

(そっか、回すのね)

「これからは自分で変えようとせずに、誰でもいいから男を呼べ。別に俺でもいいから」
「はい……ありがとうございます」
「それから、椅子じゃなくて脚立を使ったほうがいい」
「承知しました」

 切れた蛍光灯を受け取り、用意していた新しい蛍光灯を渡す。隆文が取りつけてくれているのを見ながら、優しいところもあるじゃないかと感心した。
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