大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「そんなことより四條家より歴史の古い花秋さんのおうちの蔵のほうが貴重なものがありそうだわ。確か藤原四家の流れを汲むお公家様よね?」
「ええ。といっても没落してますが」

 侑奈は入り口付近に積まれた比較的新しい箱を開けながら苦笑した。

 応仁の乱以降、先祖が生き延びる道を模索した結果が、今の家業だ。『家柄や血統では米俵は買えない』という先祖の教えが残っているあたり、華々しい時代より苦しい時代のほうが長かったのだと思う。

(まあだからこそ、うちの家系は仕事大好きなのよね)

「そう? 充分盛えているように思うけど」
「それは家業を頑張って盛り返したからです。一度地まで落ちているせいか、貪欲なんですよ、うち」
「あら、歴史が長いと苦労も多いのねぇ」

 上原と昔話をしながら、二個目、三個目の箱を開けていく。

(ここらへんのものは新しそうだし、きっとあるならこの中だと思うのよね)

「あ! みーつけた!」

 四つめの箱を開けたときに、乱雑に押し込められた衣服が目に入る。
 おそらく隆文が隠すように放り込んだのだろう。

 侑奈が見つけたそれを手に取ってご満悦の表情を浮かべていると、上原が困り顔で笑った。

「あらあら、しわくちゃね。坊ちゃんったら、ちゃんとたたんでしまわないんだから困っちゃうわ。花秋さん、少し埃っぽいからセーラー服を洗濯しているうちにシャワーを浴びちゃいましょうか」
「はい」

 その後、侑奈はうきうきでシャワーを浴び、洗濯を完了させた。
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