大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「文化祭行けなかったから、私だけ隆文の女装を見られていなくて寂しいんです。これ着て、私に可愛いタカコちゃんを見せてくれませんか?」
「タカコって呼ぶな。第一、お前が俺を避けてたんだろ」
「じゃあ、フミコちゃんって呼びますね」
「そういうことじゃねぇんだよ!」

 真っ赤な顔で声を荒らげる隆文に、侑奈はプハッと噴き出した。お腹をかかえて笑い出すと、彼の顔がさらに赤く染まる。

「侑奈! ふざけるのも大概にしろ」
「だって……幼馴染みの私たちがするはずだった色々なことをして、過去をやり直したいって言ったのは隆文ですよ。ねぇねぇ、やり直しましょうよ。文化祭の女装カフェ」

 甘えるようにすり寄り隆文の頬をツンツンとつつくと、彼の眉間に深く皺が刻まれた。だが、へらへら笑っている侑奈を見ながら何かを考えはじめた彼は、しばらくの長考ののち「分かった」と折れた。

(えっ……!?)

 もう少しごねると思ったのに、承諾されて拍子抜けする。侑奈が目を瞬かせると、隆文が侑奈の腰に手を回してきた。


「その代わり、侑奈も高校のときの制服を着てくれよ。すごく可愛かったから間近で見てみたかったんだよな」
「え? 私も? でも私が着ても何も面白くありませんよ……」
「面白くなくていいんだよ。俺に嫌なことさせるならご褒美を寄越せよ」

(ご褒美……)

 なんて図々しい男だ。侑奈は自分のことは高い棚に上げて、隆文をじっとりと見た。
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