大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「侑奈」

 だが、まるでセックスをねだってくるときのように優しくて甘い声で名前を呼ばれて戸惑う。

 頷けば、高校の制服を着たあとのことが簡単に予想できた。

(まさかその恰好のままエッチする気? 二人ともスカート穿いてるとか、シュールすぎない?)

 ほぼ毎晩求められているので、今さら拒むつもりはないが、それはちょっとと……侑奈は苦々しく笑った。そのとき、玲子と荒井が事務所に入ってきて嬉しそうに手を叩く。


「二人とも仮装するの? せっかくだからカメラマンを呼びましょうか」
「仮装じゃなくて女装だ。じゃなくて、馬鹿なこと言うなよ。頼むから話をややこしくしないでくれ」

 しっしっと手を振る隆文の頭を玲子がスパーンと雑誌で叩いた。思った以上に大きく鳴った音に侑奈が飛び上がると、玲子が何事もなかったようにたおやかに微笑む。

「その衣装だとスカート丈が長すぎるから切りましょうか。ミニスカートのほうが今どきよ」
「今どきとかそんなのじゃなくて脚を出したくないんだよ」
「荒井さん、このスカートの丈を直してくれる?」
「聞けよ!」

 玲子と隆文のやりとりについ笑ってしまう。
 いつのまにか事務所には屋敷の使用人が集まってきて、皆クスクスと笑っていた。侑奈も一緒になって笑っていると、隆文が侑奈の肩を掴む。

「頼むからばあさんを止めてくれ。女装で記念写真なんて洒落にならないぞ」
「えー、でも私もミニスカートを穿いた隆文が見たいです」
「……じゃあ、こうしよう。止めてくれたら、二人きりのときに侑奈のお願いを聞いてやる」
「お願い? なんでもいいんですか?」
「ああ、でも一つだけな」
「はーい」

 その後、侑奈は玲子に「カメラマンに撮ってもらうならかっこいい隆文のほうがいい」と進言した。すると、玲子もそれもそうかと考えたようで、パーティー前に正装で写真を撮ることを条件に解放してくれる。

(何を叶えてもらおうかしら……。あ、でもいざというときのために取っておくのもいいかも)

 侑奈はワクワクと考えを巡らせた。
 隆文に何をしてもらおうか考えるだけでめちゃくちゃ楽しい。
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