大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「侑奈、愛してる」

 眠っている愛しい人の手を握り、想いを告げる。それは懇願に近い。

 今さら嫌われていた昔になんて戻れない。侑奈を失うなんて耐えられない。

 一度でも懐に入れた者を無碍に扱えない優しく真面目な性格の侑奈が、ここまできて隆文を捨てるようなことはないと頭では分かっているが、たまにものすごく不安になる。

 どうしようもないくらい彼女にハマっているのだ。こんな自分の側にいてくれる侑奈を誰よりも誠実に愛し大切にするし、どんな我が儘だって叶えてやる。それが自分にはできると自負している。


「だからもっと俺のこと好きになってよ」

 寝返りを打ち隆文にすり寄ってきた侑奈をぎゅっと抱きしめる。

 隆文の反省と愛情、執着が伝わっているおかげか、正直なところ好かれているとは思う。恋人として特別扱いもしてくれているだろう。
 おそらく淡い恋心を持ってくれているみたいだが、まだ自覚はしていないように思う。

(恋愛というものがよく分からないと言っていたし、俺への恋心を自覚させるにはまだまだ時間が必要だろうな)

 できれば気づいてほしいし、いずれは自分と同じ強さで愛してほしい。

 侑奈の髪を撫でて小さく息をつく。
 そうは言っても正式に婚約も交わしたし、三ヵ月後のパーティーがうまくいけば、完全に侑奈は俺のものだと世間に周知できる。そうなれば医療業界に流れている『花秋家のご令嬢と四條家の御曹司は不仲』なんて不名誉な噂も払拭できるはずだ。

(まあ焦る必要はないよな。侑奈はもう俺のものだし)

 隆文は侑奈の想いが追いつくよりも早く、彼女を囲っていっている自分や祖母に苦笑して、侑奈を抱き枕に眠りについた。
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