大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「ねぇ、隆文。玲子さんが用意する着物は高価すぎると思いませんか? それに今日用意されたもの全部、隆文との婚約話が持ち上がる前から仕立てていたらしいんです」

 今日種明かしされて、衝撃が走ったのは言うまでもない。彼女はあの日我が家に話を持ってくる前から、侑奈と隆文の結婚を画策していたのだ。

 侑奈が眉根を寄せると、隆文が立ち上がり「あー」と低い声を出して首裏に手をやった。

「たぶん俺らが生まれた頃から考えていたと思うぞ」
「そんな前から……!?」

 さらなる衝撃が走り、侑奈がおののくと着付け師に「動かないでください」と注意される。侑奈はごめんなさいと謝って背筋を正した。

(でもまあ……おばあさまたちの仲の良さなら仕方ないのかしら)

 互いの子供を結婚させようと女学校時代に約束していたのだが、どちらも娘には恵まれず諦めたと聞いたことがある。大方そのときに孫に託すと決めたのだろう。

 祖母と玲子の考えを想像して溜息をつくと着付けが終わったのか、着付け師が「お似合いですよ」と褒めてくれた。その瞬間、隆文がスマートフォンを取り出してパシャパシャと撮影しはじめる。


「ちょっと隆文……急に撮らないで」
「最高に似合ってる。その少しうざそうな表情がすごくいい。そこの扇子持って、ちょっとポーズ決めてみて」

(やっぱり踏んでやろうかしら)

 大興奮で写真を撮りまくる隆文に嘆息する。そのとき、玲子がすごく嬉しそうな声を出した。

「あらあら、すごく似合ってるじゃないの。これに決めようかしら」
「玲子さん……これは駄目です。私には分不相応です」

 慌てて不承知の意思を示す。
 玲子が用意するものはすべて一千万や二千万はくだらない高価なものばかりだ。玲子や祖母がそういうものを好んで着ているのは知っていたが、自分が着せられるのは困る。
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