大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「でも侑奈もその教授の態度を不快に思ったんだろう? なら、心配しなくてもいいんじゃないのかな?」
「そういうわけにはいかねぇよ。やっとここまできたのに、今侑奈との仲を邪魔されるのは困るんだ。くそ真面目な侑奈のことだ。尊敬する教授に説得されたら、あいつの手を取ってしまうかもしれないだろ」

 そもそも侑奈が祖母の話を受けてメイドを始めたのも創薬研究がしたかったからだ。

 大企業の研究所は資金や設備面ではいいかもしれないが、如何せん好きなことはできない。だが、篠原のところならどうだ? 資金は少ないし設備面では劣るが、ある程度のびのび研究ができるんじゃないのか?
 そのうえ憧れの教授ときている。何を良しとするかは人によるのだろうが、侑奈はどうだろうか。尊敬する教授のもとで学びながら、好きなことをやりたいと願っても不思議ではない。

(そうなったとき、俺は笑顔で侑奈の選択を応援してやれるだろうか……)

 隆文が飲み終わったコーヒーの缶を感情のままに握り潰すと、悠斗が苦笑する。


「篠原教授って功績よりも良くない噂のほうが多いんだよ。実際、侑奈が卒業したあとすぐに大学をクビになってる。セルペンテとかいう小さな製薬会社に拾われたみたいだけどね」
「クビ? 何をしたんだ?」
「さあそこまでは……。でも侑奈の兄としては、そんな怪しい教授のもとでは働かせられないから、隆文がもっとしっかりしてよ。そんなふうに嫉妬に目を曇らせてないで、ちゃんと調べて判断してくれないと困る」

 篠原の良くない噂とやらを侑奈は知っているのだろうか。いや、真面目でどこか抜けている侑奈のことだ。純粋に篠原を慕っているのだろう。

(すぐにでも徹底的に調べさせるか……)
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