大嫌いな幼馴染と婚約!?〜断ろうと思っていたのに彼の謝罪と溺愛に搦めとられました〜
「実際性行為後数時間で重篤な麻痺が起きている。どこの救急病院もこれのせいで今パニック状態じゃないかな」
「それはまずいな。早く回収しないと……」
「と言っても、夜の街に出回ったものなんてそう簡単には回収できないよ。うちも警察と協力して情報共有しながら治療にあたってるけど、正直おてあげ状態かな」
「そこまで深刻なのか……」

(せめてこの青色のものに、本当に解毒作用があれば良かったのに。だが、それにしても(たち)が悪いな。解毒剤と偽ったものと一緒に出回らせるなんて……)

 隆文が舌打ちをすると、悠斗が隆文の肩をポンポンと何かの書類で叩いた。


「その媚薬に対応できる薬を、篠原教授が今開発中らしいよ」
「え……」
「この薬が開発されたらきっと篠原教授は再び脚光を浴びるだろうね。そうなれば侑奈の目にもヒーローにうつるかもしれないよ。隆文はいいの? 侑奈の羨望の眼差しを横取りされても」

(篠原に負ける?)

 悠斗の言葉は挑発だと分かってはいるが、事実侑奈は篠原を尊敬している。もし隆文よりも素晴らしいと思えばあいつのもとに行ってしまうかもしれない。そんなのは嫌だ。

 ぐっと拳を握りしめ、悠斗に強い眼差しを向ける。

「でも玲瓏薬品でこの媚薬の成分を解析し、対抗できる薬をつくれたら侑奈は隆文を褒めてくれるだろうね」
「やってやるよ。絶対にうちが篠原より先に薬を開発してやる」
「侑奈が絡むと単純で助かるよ。じゃあ、一刻も早くお願いね」

 そう言って手をひらひらと振り診察室に入っていく悠斗を見送り、隆文はこの問題を協議するために役員室へ向かった。

(成分分析の前に、この薬の危険性を全社員に通達しないと……というよりしばらくは残業を禁止し夜はあまり出かけないように言い含めるべきか)
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