私の二度目の人生は幸せです

14 パルミッツ国立魔法高等学院


「それでは行ってきます」

 支度を済ませた私は王都デルタの郊外にある自宅から出発した。

 最寄りの駅からデルタ中央駅向けの魔導列車に乗り込むと見晴らしのいい2階の屋外席へと上がる。

 この異世界の列車は電気や蒸気ではなく、魔物や魔獣から取れる色見石(カラーストーン)を動力源としており、鉄の塊である列車を動かす色見石はかなり上位の石が使われている。

 郊外のポツポツと建っている住宅街を抜けると見晴らしのよいデルタ湖へと出た。

 デルタ湖は大きな丸い湖で、3本の浮橋によって湖中央にある市街地と陸地を繋げている。

 巨大な浮橋を走りながら、諸外国から水の都と讃えられる市街地を一望すると手前には屋根が鮮やかな水色で染まった商業地が見え、デルタ湖のちょうど中央にあるエブラハイム王国の真っ白な王城の上半分が顔を覗かせている。

 列車は市街地に入るとすぐターミナルになっている。そこから目的地まで徒歩で30分以上はかかる。だが建物の間を網目状に水路が走っており、まるで日本の車道のように水路を高速魔法船が往来しているので、乗船し移動する。交差点には魔法で制御された信号機があり、信号どおりに進んだり止まったりして約5分ほどで目的地周辺の船乗り場へ到着した。

 船着き場から階段をあがったそばに私がこれから3年間、寮に入って学ぶパルミッツ国立魔法高等学院の高い塀がそびえ立っていた。

 一般入試による倍率が30倍超えの超難関校で、筆記、実技ともにハードで知られている。だが階位の低い貴族や魔力が全体的に低い平民もこの学院を卒業できたら就職率が100%であるため、皆、こぞって毎年受験に望む。

 それくらい難しいはずなのだが……。

 私は8歳になるまでに高等学院卒業程度の知識を習得したあと、初等学院、中等学院と一般校に通いながらも足繁く王立魔法図書館へ行って閲覧できる書物はだいぶ目を通していたので、これといって難しいと感じなかった。

 元々、20代前半の知性のまま赤ん坊に転生したので、まわりのひととスタートダッシュが圧倒的に違っているし、なによりバロア・デニエールとアールグレイという偉大なふたりの賢者との出会いが大きかった。

 結果、今年の新入生のなかで一般試験を成績トップで入学した私は早くも有名人枠に入れられてしまった。

 私が校門から姿をみせると校内でざわめきが起きる。

 成績であまり目立ちたくなかったが入学試験だけは上位5人まで学費が免除されるので本気を出さざるを得なかった。だけど入学してしまえばこっちのもの。成績はあまり目立たないようにうまく加減していくつもり。

 でもまあ私が新入生のなかで一番という訳ではない。一般入試を受けずとも自動で王立中等学院から上がってくる上位貴族たちがいる。

 今年はなんでも〝黄金世代〟と呼ばれる才子、才媛が集っているそうで、ゲームでおなじみの正規ルートであるエブラハイム魔法王国第1皇子レオナード・デマンティウスや、レオナード皇子の補佐役にして万邦無比のロニ・ゴットフリート。将来、魔法研究機関へ幹部入りが約束されている智者ミラノ・ハイデン。他にも将軍の息子で中等部まで魔法闘技大会で無敗のウェイク・ルーズベルトなど錚々たる面々が同級生として、机を並べる予定。

 もちろんゲームの主人公、光の聖女サラサ・ボールドマンも私の親友としてこの学院に入学予定になっている。

 入学式が始まると、一般入試成績トップの私でもなければレオナード皇子でもない男子が挨拶のために登壇する。

 10年近く会ってなかったが見間違えるはずがない。ベルルクの街を救った〝英雄(・・)〟キャム・テイラーその人である……。


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