私の二度目の人生は幸せです

26 暗殺未遂


 私は1点をもぎ取ったあとは守備に徹した。

 途中、こちらも若干チート気味なサラサに何度もゴールをおびやかされたが、ふたりの仲間が頑張ってくれた。ナイトのポジションを買って出たミラノがシュートを防ぎ、キングを任せられた転校生オポトが鮮やかな動きで襲いかかってくるボールをかわす。

 そして1点を守りきった私たちのチームが勝利した。それとほぼ同時にもう一組の対戦も隣のグラウンドで決着した。ロニとウェイクのいるチーム。あちらも1対0でギリギリ勝ったって感じみたい。

 5分間の休憩のあと、私たちチームとロニ、ウェイクチームとの試合が始まった。私というチートキャラがいる分、押し込んでいる。

 だけど点が入らない。私を含めた仲間のシュートをナイトのロニがことごとく止めてくる。かといってキャムに放った殺人シュートをロニへ向かって打つなんて心の優しい私にできるはずがない。

 結局、互いに0点のまま延長戦に突入した。

 ポーンが自陣のキングのいるキャッスルエリアからボールを蹴って敵陣のキャッスルエリアの枠内にピタリと止まれば点になる。ポーンの4人が蹴って得点が多い方が勝ちとなる。

 落ち着け私、落ち着けばこの距離なら決められる。大きく深呼吸をして空気を胸いっぱいに取り込む。

「おせー早く打てよ」

 カチンときた。キャムの野次のせいでボールはキャッスルエリアに止まるどころか奥にある壁に突き刺さり破裂した。

 結局、延長戦は1対2となり負けてしまった。

 別にそれは構わないのだがキャムの私に対するザマミロ顔が気に入らない。また機会があったらヤツの顔に強力なシュートをねじ込んであげよう。

 ✜

 魔法実習が終わり、魔法生物学の授業でハプニングが起きた。

 魔法生物学は元からいる先生と新任のラーゼ先生が交互に講義を受け持っているが今日はラーゼ先生が教壇に立っていた。その先生が用意したマンドレイクのうちの1匹が抜いてもいないのにいきなり叫び声をあげた。

 精神抵抗の低い生徒から気を失っていき、半分くらいの生徒が意識を無くしたが、ラーゼ先生の沈黙魔法が間に合ったお陰で幸い誰も命を落とさずに済んだ。

 それにしても気になる。

 よりにもよってキャムの班のマンドレイクが暴発した。アイツ日頃の行いが悪すぎて命を狙われていたりして。

 キャムは運がいいのか、マンドレイクが講義室に運ばれた時、ミラノと一緒に万が一のための耳栓を取りに隣の準備室にいたので、助かった。

 だけど、本当に狙われていると確信に変わったのは、魔法生物学の講義後だった。

 クラスのほとんどの生徒が魔法生物学の講義室を出て、実習棟から一般棟へ向かうべく階段を降りていたら、階段の上にある巨大な石像が倒れてきた。もし、ブリキ人形に星幽体(アストラルボディ)を定着させたアールグレイがいなかったら大惨事になっていた。彼のマジックサークルによるサポートで私が高速詠唱で完成させた空間静止魔法で頭のすぐそばまで落ちてきた像が動きを止めた。

 止まっている間に全員、階段の下まで急いで降りて安全なところへ身を隠すと同時に石像にかけた魔法が解け、木でできた階段を壊して階下へとずり落ちていった。

「シリカ、ありがとう助かった」

 めずらしくロニから声を掛けられた。灼髪、灼眼で燃えるような目の色とは真逆なクールな思考と言動に乙女ゲーをしていた私は彼を推しキャラ認定した。ロニのような心までイケメンが前世で私の前に現れていたらきっと私は異世界になど来ていなかっただろう。

 彼は先ほど友人であり、国王から護衛するように命じられているレオナード皇子の命を守るべく魔法を唱えている時間がないと悟ると、皇子の前に移動し、盾になるべく立ちはだかっていた。

 階段が思いきり壊れてしまい、その場にいた生徒全員が、教師たちによって集められ〝ことば(・・・)〟による質問を受ける。「ことば」には魔力が込められているため、嘘の返事はできない。だが、質問を受けた結果、その場にいた全員が被害者で、教師陣も頭を悩ませる結果となった。

< 26 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop