私の二度目の人生は幸せです
28 アンフィテアトルム
試合中にラーゼ先生を追い込めばボロが出るのではないか? 戦闘中に「すべてを知っている」とブラフを流し、命の危機に追いやったら本性を曝す可能性が高い。
「ならまずは優勝を狙おう」
レオナード皇子がサラリと優勝宣言をするが、そんなに簡単に優勝できるのか?
このメンバーであれば中々いいところまで行くと思うが、大会には上級生も混じっている。私たちは上級生の実力を知らないが経験が違う分、不利な状況に変わりはない。
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翌週の週末に魔法闘技大会が開かれた
魔法闘技大会というのは、魔戦遊戯と呼ばれる年末に行われる何でもありの大会とは違って、自分に対してのみ作用する身体強化魔法などしか認められていない。身体強化魔法は、いわゆる掛け算で個人の元々の身体能力に魔法出力を掛けたものにある。そのため出場するメンバーはほぼムキムキの体力に自信のある体育会系のサークルに入っている男子ばかりである。
そんな中に女子がふたりもいるチームはそれだけで異色といえる。
特に他の学年……2年や3年といった上級生からみればレオナード皇子と第3階位貴族の家系で代々、王族の護衛を任せられているゴットフリート家の男子が主戦力で、他の3人は数合わせだと思われているだろう。
メンバーはレオナード皇子とロニの他は私シリカとエマ、そして1学期の後半に転校してきたオポトの5人である。
なぜオポトがこのメンバーに入ったかと言うといつものようにサラサをキャムに取られてしまったから……。身体強化魔法も以前トラパルカンという競技中に見せた動きをみる限り、そこらの男子より遥かに動ける。
まあオポトもトラパルカンの時に小柄ながら動きが良かったので、彼もなかなかいい働きをしてくれると期待している。
問題なのはエマ・リュール。彼女は私のルームメイトになったばかりにいろいろと面倒ごとに巻き込まれていて、大変申し訳ない。素質は他の生徒と比べてけっして低いわけではないが、いかんせん周りがチートすぎる。彼女がついてくるのはかなりのハードモードだと思う。
予選は各学年同士で2チームになるまでトーナメント戦が行われる。予選で勝ち上がった各学年の代表2チームは、くじ引きで対戦チームが決まり、総当たり形式で勝利数が多いチームが優勝となる。
ちなみに1年は大会に上級生が混じっているので委縮したのか4チームしかいない。なので1回勝てば学年代表になれる。
だけど相手がまさかのキャム率いる同じクラスの連中だったので、驚いた。
キャム、ウェイク、ミラノ、そしてサラサまで……。もう一人は間に合わせの生徒のようだがクラスの中では結構、実習で上位になる男子生徒だった。
闘技会場は円形闘技場で、試合開始と同時に魔法で作られた特殊なフィールドにランダムに転移させられた。
本試合のフィールドは「森」……みんなバラバラに転移したので一刻も早くエマを見つけなければいけない。
会場は広大で実物の円形闘技場よりも十倍以上の広さを持つ。これはこの闘技場にかけられた空間魔法装置によるもの。実際の広さと魔法による拡張空間のギャップに初めて実習で闘技場を使用した時は戸惑ったが今はもう慣れた。
この円形闘技場にいる参加者にはひとり3台のドローンタイプの魔法で動くカメラがついて回っている。このカメラを通じて会場の客席にいる大会に参加していない生徒や教師、審判が見ている。
「ようやく直接やり合えるなっ」
くそー急いでるのにもっとも厄介な相手と遭遇した。
ウェイク・ルーズベルト……彼の身体能力は学年で一番高く、魔法闘技の主戦闘スタイルであるドレイザの使い手。ドレイザはエブラハイム王国の正式な近接格闘術で速習性が高く実戦的であるため魔法騎士団や魔法兵は全員ドレイザの訓練に余念がない。
ウェイクは身体強化魔法に特化しており、魔法闘技大会は彼の独壇場になる予定だった。
ただひとつ私を除いたら……。