私の二度目の人生は幸せです
32 いざ湖底宮殿へ
アンナ嬢の発言により、私とキャムがついていくことになったが結果、大所帯となる。
サラサが心配して私のそばを離れず、キャムにはミラノとウェイクが付き従っている。
到着したのは、学院の校舎裏……うーん、なんだこの展開?
「アナタ達に決闘を申し込むわ」
ちょうど5人いるから5対5で勝負しようとのこと。学院には話を通してなどおらず、いわば私闘にあたる。もちろん禁止されているので、やるべきではないのだが……。
いいんですか、やっちゃって? 手加減しませんよ?
キャムが「あ? じゃあ瞬殺してやるよ」と勝手に返事してしまったが、今回は許す。まあ私の身を案じてついてきたサラサには申し訳ないと思っている。
時間も無いので一気に勝負をつけることになった。
それぞれ少し離れて軽く打ち合わせをする。
「皆さん、気をつけてください」
ミラノが眼鏡の位置を指で直しながら忠告した。あの5人は昨年の魔戦遊戯の優勝者。当時2年だったにも関わらず勝ち抜いたその実力は本物だと教えてくれた。
特に一番泣いた顔が見たいアンナ嬢が強いらしい。ひとは見かけによらないものだ。
対する私たちは全員1年。
私、ミラノ、ウェイク、サラサまではいいとして、もう一人はキャム……。
魔法の出力は実習の時間に拝見したので申し分ない。だけど協調性が、ねー?
打ち合わせが終わったあと、レオナード皇子とロニが見守るなか私闘が始まった。
決着はすぐについた。なんと私たちの圧勝……。ってこの3年生の人たち本当に前年の優勝者なの? 話にもならないんだけど?
たしかに私たち同じクラスの子達と比べると全然強いけど、私及びその周りからしたら全然たいしたことがなかった。
5人とも気絶してしまっているのでサラサの光魔法で治癒を施し目を覚まさせた。
決闘の結果、勝った方がレオナード皇子とロニを茶会に誘えることになったので、私のデザートを得る権利は守られた。
アンナ嬢は「覚えてなさい!」としっかり悪役らしい捨てゼリフを吐いて校舎裏をあとにした。いったい何だったんだろう?
✜
茶会の準備金を申請していたので学院からもらった。
3シルビかぁ、これくらいで足りるのかしら?
エブラハイムに流通しているお金の単位は白金貨、金貨、銀貨、銅貨とあり呼び方はプラナ、ゴルド、シルビ、ブロズとなっている。だいたいだが日本円に換算すると100万、1万、1,000円、100円くらいの感覚で合っていると思う。
まあお菓子を3,000円分くらい買えばいいくらいだ。なんとかなるだろう!
──と考えていたが現実は甘くなかった。
まず、場所を確保できなかった。エマの家……リュール家が第5階位貴族なので、第7階位貴族である私の平民とあまり変わらない家より豪華だろうと期待していたが、彼女には3年の姉がおり、姉が先に家の使用を親に申し出ていたため、彼女の家が使えなくなった。サラサはテイラー家で働いている身なので、そもそもあの家には行きたくないし、なによりサラサに負担をかけたくない。
消去法で私の家に決まったのだが……。エマの話だと内装や飾りつけ、ティーウェアやテーブルクロス、ライナーなんてものもあるそうな。
まずい、ランバート家ではそんな大層な茶会など開いたことがないのでほとんど家にないものばかり。3銀貨では到底足りない。
(お金が必要なんですか?)
(はい師匠、どこかにお金落ちてないですか?)
(ありますよ、お金)
マジか。ブリキ人形の賢者アールグレイに物入りかと聞かれたので冗談のつもりで返したら本当にお金があるそうな。
(それでは取りに行きましょうか? 湖底宮殿へ)
話が早くて助かる。明日は国王の戴冠記念日で祝日に当たるので、これから潜れば休みの日の間に帰ってこれる。私はさっそくエマとサラサに声をかけて湖底宮殿へ潜る準備を始めた。