私の二度目の人生は幸せです
43 新しき挑戦者
ダンジョンは地下迷宮といっても迷宮のように壁がそそりたっている訳ではなかった。何もないだだっ広い平原……空を見上げると、なぜか雲と太陽がある。
(ここは歴としたダンジョンですよ)
アールグレイに説明を求めると、空に浮かぶ太陽や雲はダンジョンが見せている前世の世界でいうモニターのようなもので、地上の時間とちゃんと合っていて投影されているそうだ。
「新しい挑戦者を確認、あなた方の個人の能力をステータス表示します」
「──っ!?」
びっくりしたぁ……。なに? 前世でいう防災無線で流れるような音声が鳴り響いた。
ここか、少し先にある不自然な焚火台と寝台がポツンとある。その近くに私たちの顔が半透明な板に映っていてその下にステータスが表示されている。
「痛っ」
私たちが近づくと先頭を歩いていたオポトが見えない壁に顔をぶつけた。痛がっているオポトの隣まで進んで手を伸ばすと透明な壁があった。
「ここじゃないかな?」
少し離れたところに装飾錠が浮かんで見えているものをロニが触るとガチャリとドアが開いた音がした。
ちょっと分かりにくいが、見えない壁の地面をよくみると運動会でライン引きに使う粉のようなものが引かれていて、その線に沿って透明な壁があった。
「透明な家のようですね」
サラサが言うようにまさしく透明な家だった。天井も透けて見えているが試しに銅貨を上に投げてみると3メートルくらいの高さのところで金属音がして跳ね返って落ちてきた。
「ここになんかあります」
エマがなにかを捲る素振りをしているので私も近づくとカーテンのような手触りで奥の方はバス、トイレがついていた。だけど一旦外へ出ると外からは透明でなにも見えない。これってプライバシー保護機能がついてる?
透明な建物のカラクリをひと通り確認した後、焚火台のそばに浮いているステータスバーを確認した。
【Name:Gender:Age:VIT:MP:STR:AGI:INT:MND:DEX:ST:LUC】
Shirica:Female:16
:138:70,787:36:35:389:211:38:29:100
Sarasa:Female:16
:145:5,015:31:41:110:308:33:40:100
Emma:Female:16
:125:878:35:33:58:47:26:27:32
Leonard:Male:16
:178:1,831:68:57:75:51:71:59:67
Roni:Male:17
:288:2,315:99:85:77:37:33:88:22
Opto:Male:14
:221:1,547:71:115:45:10:59:75:8
Milan:Male:17
:158:2,099:41:28:153:55:18:26:28
Wake:Male:16
:367:1,011:147:53:31:16:18:81:18
私って色々ぶっ壊れてたステータスしてるなぁ……MPって総魔力量のことでしょ、7万ってヤバすぎでしょ。
乙女ゲーをしていた時はやっぱ主人公だけあってサラサのステータスが壊れているようにみえたが、こうやって並べてみると私……シリカ・ランバートの異常さが際立つ。
ゲームでは皆、これからいろいろと経験して高等学院3年の卒業までには魔力総量は今の倍くらいにはなっていたが、成長しても私の魔力総量の足元にも及ばない。
焚火台に火をつけると、コマンド画面が現れた。
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ダンジョン1層のクリア条件
10日分の食料を確保する。
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なんかゲームっぽくなってきた。
10日ぶんの食料の確保……ここに来るまでに池とか森とかあったので、魚や果物を確保すればいいのかな?
陽が沈む前に手分けして食料調達に当たると森のなかに分け入った私とロニ、エマが魔物に襲われた。
ゴブリン、緑色の肌をした背丈が1メートルちょっとで人間の子どもくらいの腕力しかない。だが魔物の中では知性が高い方で罠を仕掛けたりしてくる。
草むらのなかに輪っかを仕掛けて、そこを踏むと輪っかと繋がった縄が近くの木の枝へ結ばれていた。しなって戻ろうとする力に縄が足に引っかかりエマが逆さの宙づりになった。
【ステータス解説】
Name : 名前
Gender : 性別
Age : 年齢
VIT (Vitality) : 生命力
MP (Magic Points) : 魔力総量
STR (Strength) : 筋力
AGI (Agility) : 敏捷性
INT (Intelligence) : 知性
MND (Mind) : 精神力
DEX (Dexterity) : 器用さ
ST (Stamina) : スタミナ
LUC (Luck) : 幸運