マイ スイート バニィ
「魅了の力が発動するのは、女の子だけだ。ここ何十年も、バニィの血を引く者からは男の子しか産まれてこなかった。だから……もう、バニィの遺伝子は消えてたって思っていたのに……」
パパはズビ!と鼻を吸うと、続けて口を開く。
「それは都合のいい思い込みだったんだ。衣舞は普通の女の子だって、思いたかったんだ……」
パパがあまりにも取り乱しているせいなのかな。
私は思ったより、冷静に話しを聞き入れることができている。
「男の子しか産まれてこなかったってことは、パパがバニィの子孫ってこと?」
「……あぁ、その通り。俺もバニィの血を引いている。ママは普通の人間だ」
ひくっひくっと呼吸が乱れるパパの背中を、ママがさする。
「俺は男だから……見た目の特徴も現れていないし、魅了の力も発動していない」
……つまり私は、久しぶりに誕生したバニィ。
私も男に生まれていたら……”普通”でいられたのかな。
なんて、そんなことを考えたって何も変わらない。
「……そもそも、魅了の力ってなに?」
ここでようやく、これまで聞き流していた"魅了の力"について質問をした。
なんとなくわかりそうでわからない言葉だ。
「魅了の力は……特殊な色香のことだ。魔法に掛かったバニィは副反応によって、その美しさを増した。それに加えて、異常なくらい男を惹きつけてしまう色香を纏うようになった。それを”魅了の力”と呼んでいる」
「特殊な、色香……」
「バニィは外見の美しさももちろんだが、目に見えない、男の理性を狂わせるフェロモンを放っているんだ」