学校の怪談
 無月:「ねぇ、この学校の七不思議って……知ってる?」
 
 闇が深まる深夜1時。今は使われていない旧校舎の1階玄関口。
 
 藤:「……ねぇ、やっぱり止めようよ!!」

 小夜:「もう!!ここまで来て何言ってんのさ……」

 虎太郎:「そうそう!!ここまで来たのに今更怖気付いたのか?やっぱり藤はビビりだなぁ笑」

 無月:「ふふふ、可愛いなぁ」

 藤:「だってぇ……」

 小夜:「はいはい。ちゃっちゃと調べて帰ればいいじゃん」

 藤:「うぅ……」

 虎太郎:「こっから1番近いのは増える13階段か?」

 一同は1つ目の場所へ向かう。

 虎太郎:「ここだな」

 無月:「見た目は普通だね」

 小夜:「普段だと12段らしいけど、夜中になると13段に増えてるらしい。そしてその13段目を踏むと異界に連れてかれるって噂だ」

 藤:「どうするの……?」

 虎太郎:「どうするって、登る以外に選択肢ないだろ」

 藤:「そうだけど……、誰が登るの……?」

 小夜:「藤、登ってく?」

 藤:「い や !!!!」

 虎太郎:「だろな。俺が行くか……」

 嫌がる藤を見て虎太郎は、渋々名乗りを上げる。

 無月:「あ、私も行く〜」
 
 虎太郎:「いくぞ。」

 虎太郎は、足を一歩踏み出す。
 
 虎太郎:「……1……2……3……4……5……6……7……8……9……10……11」
 虎太郎:「…………12」
 虎太郎:「……やっぱり、噂は噂だな!12段しかないし!」

 くるりと虎太郎は振り向くと、階段下にいる二人に声をかける。

 無月:「まあ、そういうものだよね〜」

 小夜:「ここで、虎太郎が異界に連れ去られたら面白かったんだけどね」

 ニヤニヤと笑う小夜。

 藤:「小夜!!怖い事言わないでよ!!それに、虎太郎も!!早く降りて来て!!次の場所行こうよ!!」

 そんな小夜を小突きつつ、虎太郎に早く戻るように言う藤。

 無月:「ふふふ…」

 虎太郎:「はいはい笑……っ!?」

 藤に急かされ階段を降りようとした虎太郎だったが、背後から視線を感じ振り返った。

 小夜:「虎太郎?どうした?」

 藤:「虎太郎……?」

 不意に立ち止まった虎太郎に、二人は声を掛ける。

 虎太郎の背後には大きな姿見があったが……そこには虎太郎の姿しか写ってなかった。

 虎太郎:「(こんなところに、姿見あったか……?)」
 虎太郎:「いや……なんでもない……」

 足早に虎太郎は、小夜達の元に戻った。そして一同は2つ目、3つ目、4つ目の場所を巡っていった。

 虎太郎:「音楽室の鳴るピアノも、保健室の女子生徒も、体育館の男子生徒も出なかったな〜」

 藤:「次は……動く人体模型……」

 小夜:「今のところ、何にもないからつまんないなぁ……」

 無月:「そうだね〜」

 藤:「……お願いだから……このまま何もなく終わってぇ……」

 理科室に着いた一同。恐る恐る中を覗く。
 
 無月:「……人体模型いる〜?」

 虎太郎:「人体模型って、確か一番後ろに置いてあったよな」

 小夜:「……ないな」

 藤:「ギャ――――――!!!!!!!」

 小夜:「落ち着けよ」

 虎太郎:「……どこ行ったんだろうな、人体模型」

 その時、藤の肩を叩くものがいた。

 藤:「なーに?……え?」

 振り返るとそこには顔が半壊した人体模型がいた。

 虎太郎:「ん?藤、どうし……た……」

 藤:「ギャ――――――!!!!!!!」

 恐怖で悲鳴をあげた藤のアッパーカットが、華麗に人体模型の顎に直撃した。

 小夜:「おぉ……」

 吹っ飛んだ人体模型は壁にぶつかり動かなくなった。

 虎太郎:「吹っ飛んだなぁ……」

 無月:「わぁ……」

 小夜:「とりあえず、5つ目は終わったのかな……?」

 虎太郎:「おう。次は……3階女子トイレの花子さんか……」

 藤:「……もう、帰ろうよぉ……怖いよぉ」

 小夜:「あと2つだから頑張ろ!」

 藤:「もぉ、いやぁ……(泣)」

 無月:「花子さん、会えるかなぁ笑」

 虎太郎:「さっさと次行こうぜ!」

 半泣きの藤を虎太郎が引きづりながら、一同は3階の女子トイレを目指す。

 そして3階女子トイレ前。

 無月:「着いたね〜」

 小夜:「どうするよ、誰先頭行く?」

 藤:「無理無理無理無理無理無理」

 虎太郎:「藤は……まあいいか。小夜行くか?」

 小夜:「そうするか……。藤挟む感じで行こ」

 虎太郎:「だな」

 無月:「わたし、さーいご!」

 一同は小夜を先頭に、トイレに入っていく。

 そして3番目のトイレの前にたどり着く。

 小夜:「じゃあ、行くよ!」

 藤:「出てくるな出てくるな出てくるな出てくるな」

 小夜が思いっきりドアをノックする。

 小夜:「はーなこさーん、あーそびましょー」

 藤:「出てくるな出てくるな出てくるな出てくるな」

 虎太郎:「っw」

 それから5分経って……、10分経って……、15分が経った。

 虎太郎:「出ねぇなぁ」

 小夜:「……次行くかぁ」

 無月:「つまんないのぉ……」

 藤:「……良かったぁ」

 7つ目の不思議に向かおうと、女子トイレを出ようとしたその時……。
 
 ギィ――――――

 背後から音がした。

 藤:「……ねぇ、今音したよね……」

 小夜:「うん。……あ、……開いてるわ」

 虎太郎:「マジじゃん!!」

 藤:「早く出よ!!!!!!!!!」

 無月:「わーい、いっそげ〜」

 藤が小夜と虎太郎の背中を押しながら、女子トイレから飛び出た。

 気がつけば一同は、13階段の踊り場に辿り着いていた。
 そこでようやく女子トイレから飛び出した一同は息を整えた。

 小夜:「ふー。……結局、花子さん見られなかったね」

 虎太郎:「そりゃ、藤が追い立てたからな」

 藤:「……だってぇ」

 無月:「かわいいねぇ」

 虎太郎:「息も整ったし、そろそろ7つ目行くか」

 小夜:「あー。7つ目って、なんだっけ」

 虎太郎:「確か……異界の案内人に連れてかれる……だっけ」

 藤:「……いないよね、そんな人」

 無月:「あはw何言ってんだかw最初っからいるじゃんw」

 小夜:「!?」
 
 虎太郎:「!?」

 藤:「!?」

 突如現れた無月の姿に、3人は言葉を失う。

 無月:「ふふふw君たちがこの旧校舎に来た時から……ず――――っと傍にいたんだよ?」

 ――――――そして、誰もいなくなった。


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