【Quintet】
 これだけ食欲があるなら病院に連れて行かなくても大丈夫そうだ。

「しばらく寝てなよ。私は下に行って……」
『添い寝して』

 また俺様何様海斗様の爆弾発言が飛び出した。

「so、i、ne? ……ソ、イーネ?」
『片言で言うな。寝かしつけろ』
「……ひとりで寝るの寂しいの? 子どもみたい」
『うるせぇ。早くここに来い』

寝そべった海斗が自分の隣を示した。本当に添い寝させる気だ。

「……お邪魔します……」

 病人に文句を言っても仕方ない。多少の貞操の危険を感じるが、熱が出ている状態では変なことをする気にもならないだろう。

沙羅は海斗の隣の空いているスペースに潜り込んだ。ベッドの中は海斗の熱がこもっていてとても暑い。

「暑い……」
『我慢しろ』

そのままベッドの中で抱き寄せられ、沙羅の顔は海斗の胸板に押し付けられた。抱き枕にされている気分だ。

『星夜と何回キスした?』
「何回って……っていうかなんで知ってるのっ!」
『耳元で大声出すな。何回した? どんなやつ? 気持ちよかった?』

 矢継ぎ早に聞かれる質問に沙羅の思考はパニックに陥っている。答えに窮する沙羅と視線を合わせた海斗の瞳は、熱のせいなのか他に原因があるのか、とろんととろける甘い眼差しだった。

『星夜がその気なら俺も我慢するの止めた』

海斗の言葉を聞き返す暇もなく、沙羅の身体は海斗の温もりが残る柔らかなベッドに沈んだ。彼女の上には海斗が覆い被さっている。
< 113 / 433 >

この作品をシェア

pagetop