【Quintet】
　音大の卒業生にも音楽業界で活躍している演奏家は多数いるが、容姿が恵まれている演奏家は、それだけで“美人ピアニスト”や“イケメンヴァイオリニスト”と容姿とセットで商品化されてもてはやされる風潮は、音楽の世界に生きる沙羅も常々疑問だった。

『仕事の話で思い出した。次のアルバムの曲で隼人と美月ちゃんをイメージした曲あるから』

　海斗の衝撃発言に沙羅も、隼人と美月も驚いている。

『海斗っ！　お前まさかあの時の話を歌詞にしたんじゃないだろうな？』
「あの時の話？」

こんなに焦る隼人を沙羅は初めて見た。隼人の横にいる美月が狼狽える隼人としたり顔の海斗に交互に視線を送る。

『アルバム構成にも上から厄介な注文が来るんだ。今回はラブソングもほどよく混ぜてくれって言われたから、インスピレーションのために隼人に美月ちゃんとの話を聞いてさ。色々と歌詞にできそうな話を聞かせてもらえて助かった』
『ちなみに俺達全員その歌詞見てるぞ』
『詞を書いたのは海斗だけど隼人の美月ちゃんへの想いが詰まってるあれは赤面モノ！　アマアマのアッツアツ！』

　海斗、晴、星夜の三段階攻撃に隼人はノックアウト。珍しく赤面する隼人はサンドイッチをやけ食いし、美月も顔を赤くしている。

『明後日その曲のレコーディングだからな。全員コンディション整えろよ。海斗と星夜は喉の保護忘れるな』

最後は悠真が締めてこの話題はお開きになった。隼人と美月のラブソングがどんな歌に仕上がるのか今から楽しみだ。

　午前中は昨夜の散歩ゲームで沙羅と隼人が歩いた川沿いのハイキングコースを皆で歩き、昼食は焼きそばとお好み焼きを作った。お好み焼き作りを率先して行っていたのは晴だ。

お好み焼きだけは晴が唯一まともに作れる料理らしい。
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