【Quintet】
あきる野市のキャンプ場から渋谷のマンションに帰り着いた時には日が傾き始めていた。
沙羅は十九階の自室の窓から午後6時の空を眺めた。ここから見下ろす渋谷の街にはゴールデンウィークを楽しむ人々のそれぞれの物語がある。
(キャンプ楽しかったなぁ)
これまで沙羅の物語には無縁だった大人数でのイベント。人生初めてのキャンプはとても楽しかった。
来週は20歳の誕生日。大人への第一歩が始まる日だ。きっとこれからも初めての楽しいことが沢山待っているのだろう。
部屋の扉がノックされた。開けた扉の先にいたのは海斗。
『晩飯、ピザのデリバリーにするって話になってるんだけどそれでいいか? 沙羅も疲れて料理するの面倒だろ』
「うん。ありがと。ピザ食べる」
それ以降会話が続かない。なんとなくその場を去りがたい海斗と彼の顔を見れない沙羅。
二人の間に流れる空気は沈黙だ。
『……キスしたこと怒ってる?』
「いや……あの……ね、怒ってるとかそうじゃなくて……」
『変な誤解される前に言っておく。誰にでもキスしたりしないから。俺がキスしたいと思う女は沙羅だけ』
扉と部屋の間の隙間に海斗が足を踏み入れた。沙羅の部屋に侵入した海斗は後ろ手に扉を閉める。
『強引は……ダメなんだよな……』
「え?」
小声で呟いた海斗の顔が真正面にあった。頬に添えられた彼の大きな右手は温かい。
沙羅は十九階の自室の窓から午後6時の空を眺めた。ここから見下ろす渋谷の街にはゴールデンウィークを楽しむ人々のそれぞれの物語がある。
(キャンプ楽しかったなぁ)
これまで沙羅の物語には無縁だった大人数でのイベント。人生初めてのキャンプはとても楽しかった。
来週は20歳の誕生日。大人への第一歩が始まる日だ。きっとこれからも初めての楽しいことが沢山待っているのだろう。
部屋の扉がノックされた。開けた扉の先にいたのは海斗。
『晩飯、ピザのデリバリーにするって話になってるんだけどそれでいいか? 沙羅も疲れて料理するの面倒だろ』
「うん。ありがと。ピザ食べる」
それ以降会話が続かない。なんとなくその場を去りがたい海斗と彼の顔を見れない沙羅。
二人の間に流れる空気は沈黙だ。
『……キスしたこと怒ってる?』
「いや……あの……ね、怒ってるとかそうじゃなくて……」
『変な誤解される前に言っておく。誰にでもキスしたりしないから。俺がキスしたいと思う女は沙羅だけ』
扉と部屋の間の隙間に海斗が足を踏み入れた。沙羅の部屋に侵入した海斗は後ろ手に扉を閉める。
『強引は……ダメなんだよな……』
「え?」
小声で呟いた海斗の顔が真正面にあった。頬に添えられた彼の大きな右手は温かい。