【Quintet】
レジで会計を済ませ、五人分の食材が入る買い物袋を駐車場まで晴が運ぶ。
「袋ひとつ持つよ。重いでしょ?」
『これくらい大丈夫。日夜筋トレしてる晴さまに任せなさい』
今日はバイクではなく車だ。晴と星夜は自分のバイクを持っているが、この車は悠真名義で四人が共有して使っている。
今回は買い出しに行く沙羅の付き添いで晴が車を出してくれた。
「私、ふらふらしていてダメだよね。海斗にも星夜にも申し訳ないことしてる」
『いいんじゃね? 海斗も星夜も沙羅が好きで仕方ないんだよ。好きな女とひとつ屋根の下にいて我慢する方が難しい』
車がスーパーの駐車場を出発した。後部座席には買い物袋の他にもスーパーに行く前に立ち寄ったドラッグストアで購入したトイレットペーパーとティッシュも積まれている。
助手席の沙羅は運転する晴の横顔を盗み見た。美月以外でこうして恋愛の相談ができるのは晴だけだ。
晴には自然となんでも話せてしまえる。
「晴は好きな人いるの?」
『俺は……どうかなー。いるかなー、いないかなー』
はぐらかす晴の表情はサングラスに隠れて見えない。
日々ドラムを叩いている彼の腕は筋肉質で逞しく、手首からはシトラスの香りがする。日差しをいっぱいに浴びて育ったオレンジのような、甘酸っぱくて暖かい香り。
晴は日だまりみたいな人だ。ムードメーカーで元気で暖かい彼には柑橘系のコロンがよく似合う。
日だまりみたいな人が好きになるのはどんな人?
「えー。どっちなの? 晴の恋愛の話って聞いたことないもん。気になる」
『ははっ。そのうちな』
結局、晴の恋愛話は曖昧に濁されて教えてもらえなかった。太陽が似合う晴の心の雨を沙羅が知るのはそれから2週間後。
梅雨入りの予感を感じさせる6月に“ソレ”は届いた。
「袋ひとつ持つよ。重いでしょ?」
『これくらい大丈夫。日夜筋トレしてる晴さまに任せなさい』
今日はバイクではなく車だ。晴と星夜は自分のバイクを持っているが、この車は悠真名義で四人が共有して使っている。
今回は買い出しに行く沙羅の付き添いで晴が車を出してくれた。
「私、ふらふらしていてダメだよね。海斗にも星夜にも申し訳ないことしてる」
『いいんじゃね? 海斗も星夜も沙羅が好きで仕方ないんだよ。好きな女とひとつ屋根の下にいて我慢する方が難しい』
車がスーパーの駐車場を出発した。後部座席には買い物袋の他にもスーパーに行く前に立ち寄ったドラッグストアで購入したトイレットペーパーとティッシュも積まれている。
助手席の沙羅は運転する晴の横顔を盗み見た。美月以外でこうして恋愛の相談ができるのは晴だけだ。
晴には自然となんでも話せてしまえる。
「晴は好きな人いるの?」
『俺は……どうかなー。いるかなー、いないかなー』
はぐらかす晴の表情はサングラスに隠れて見えない。
日々ドラムを叩いている彼の腕は筋肉質で逞しく、手首からはシトラスの香りがする。日差しをいっぱいに浴びて育ったオレンジのような、甘酸っぱくて暖かい香り。
晴は日だまりみたいな人だ。ムードメーカーで元気で暖かい彼には柑橘系のコロンがよく似合う。
日だまりみたいな人が好きになるのはどんな人?
「えー。どっちなの? 晴の恋愛の話って聞いたことないもん。気になる」
『ははっ。そのうちな』
結局、晴の恋愛話は曖昧に濁されて教えてもらえなかった。太陽が似合う晴の心の雨を沙羅が知るのはそれから2週間後。
梅雨入りの予感を感じさせる6月に“ソレ”は届いた。