【Quintet】
 それにこの家に彼らの来客が来るのは初めてではない。春には悠真達の友人の隼人と、隼人の恋人の美月も訪ねてきた。

(でも美月ちゃんが来た時はこんな風にモヤモヤとはしなかった)

 美月が遊びに来た4月の時点では悠真達をまだ男として意識をしていなかったと言えども、モヤモヤとした感情は生まれなかった。
美月がUN-SWAYEDの誰かの恋人ではないとわかっていたから?

(うー。わかんない……。これがヤキモチ?)

 沙羅がひとりで思い悩むうちに玄関の呼び鈴が鳴った。

『俺が出るからいいよ』

悠真が開けた玄関の前にいたのは艶やかな黒髪の美女だった。

「悠兄《ゆうに》ぃー、久しぶりぃ! いつ見てもカッコいいー!」
『……花音《かのん》。イギリスでは玄関先でいきなり抱き付くのがマナーなのか?』

 ハイテンションな美女に抱き付かれても悠真は平然としている。美男美女の抱擁シーンを目撃して唖然とする沙羅の前で美女は悠真の頬にキスをした。

「へへっ。ごめん、ごめん。久しぶりだからつい……。あっ! あなたが“サラちゃん”?」

悠真に抱き付いていた美女がこちらを見た。綺麗な黒髪ストレートのロングヘアにパーツの整った顔立ち。身長も女性にしては高くて手脚も長く、モデルのようにスタイルがいい。

「は、はい……? 葉山沙羅です……」
「やーん! 噂通り可愛いぃ!」

 見た目はクールビューティー、中身はハイテンションな美女が今度は沙羅に抱き付いた。
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