【Quintet】
「皆お疲れモードだね……」
『最後の雑誌のインタビュアーがくせ者だったんだ。ティーン誌なのを盾にして音楽とは関係ないプライベートな質問を根掘り葉掘り』
『事前の質問リストで曲の製作に関係のある質問はOKってことにしたからな。歌詞書いてる海斗はかなり突っ込まれてたよ。〈夢逢い〉のこととか。なぁ海斗ー?』

 意地悪に微笑む星夜を海斗は憮然と睨み付けた。
海斗がどんな質問をされたのか沙羅には想像もできない。答えたくない質問も多かったのだろう。

『悠真は音楽の話をするためにインタビューの仕事を引き受けたから、ラブソングの〈full moon〉や〈夢逢い〉の製作過程は話しても、そこから先の俺達のプライベートな恋愛事情を雑誌に載せる気はないんだ』
『だからここからここまでは誌面に載せてもOK、ここからの話はオフレコだからカットって、俺達が帰った後も悠真が細かぁーくチェック作業してる』
「それで悠真だけ帰りが遅くなるんだね」

インタビュー記事のチェックもしなければならないリーダーは大変だ。

『あとは悠真と北山さんの駆け引きだな』
『兄貴のチェックでかなりカットされるだろ。二度とあの女のインタビューは受けたくねぇ……』

 インタビュアーが女性と知った時に心に走った痛みが沙羅を戸惑わせた。

 心に靄《もや》がかかって見通せない。自分の心なのに自分の心がわからない。
でも霞む心の真ん中で、嫌だ……と叫ぶ誰かの声。


 ──あなたはだぁれ?
 ──あなたは……わたし?

 ──何が嫌なの?
 ──どうして嫌なの?

 ──ねぇ、どうして……
 ──こんなに心が苦しいの?

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