【Quintet】
飲み屋街から白山通りに出た悠真はタクシーを捕まえた。先にタクシーに乗り込んだ圭織は道に立ったままの悠真を見上げて眉を潜める。
「……乗らないの?」
『電車で充分です。お疲れ様でした』
彼がタクシーに乗らない意味は今夜を圭織と共に過ごさない意思の表れ。暗《あん》に男女関係の誘いを断られた圭織の不機嫌な顔は、タクシーの扉に遮られた。
圭織を乗せたタクシーが行く方向とは反対方向に悠真は足を向ける。すぐそこが神保町の駅だ。
頭が痛かった。本来なら旨い酒も飲む相手を誤れば不味くもなる。
これがオレンジ色のミモザに目を輝かせていた沙羅となら、楽しい一夜を過ごせていたのに。
神保町駅に辿り着いた悠真は半蔵門線のホームで渋谷行きの電車を待った。今からだと自宅に帰り着くのは23時半を過ぎる。
(沙羅はもう寝てるかな……)
沙羅の就寝時間を過ぎての帰宅に今日に限っては安堵していた。吐く息が重たいのは沙羅には言えない過去のせい。
「……乗らないの?」
『電車で充分です。お疲れ様でした』
彼がタクシーに乗らない意味は今夜を圭織と共に過ごさない意思の表れ。暗《あん》に男女関係の誘いを断られた圭織の不機嫌な顔は、タクシーの扉に遮られた。
圭織を乗せたタクシーが行く方向とは反対方向に悠真は足を向ける。すぐそこが神保町の駅だ。
頭が痛かった。本来なら旨い酒も飲む相手を誤れば不味くもなる。
これがオレンジ色のミモザに目を輝かせていた沙羅となら、楽しい一夜を過ごせていたのに。
神保町駅に辿り着いた悠真は半蔵門線のホームで渋谷行きの電車を待った。今からだと自宅に帰り着くのは23時半を過ぎる。
(沙羅はもう寝てるかな……)
沙羅の就寝時間を過ぎての帰宅に今日に限っては安堵していた。吐く息が重たいのは沙羅には言えない過去のせい。