【Quintet】
 圭織の姉の北山亜紀子とは今でも連絡を取り合っている。
亜紀子はUN-SWAYEDの音楽プロデューサー、葉山行成が代表取締役社長を務めるレコード会社の傘下レーベルの社員。UN-SWAYEDの所属はこのレーベルだ。

 UN-SWAYEDのマネジメントは吉岡繁が代表の芸能事務所エスポワール。
UN-SWAYEDのCDの販売元のレコード会社社長が葉山行成、
行成のレコード会社の傘下でUN-SWAYEDと契約してCDの企画製作を行っているのが亜紀子が勤めているレーベル。

この三つの関係でUN-SWAYEDの芸能活動は成り立っている。

 10歳年上の亜紀子とはプライベートではなくビジネスの付き合いでフェアな関係は続いていた。元々、インディーズ時代のライブ活動で出会った仲だ。

姉の仕事を調べれば亜紀子の勤め先がUN-SWAYEDの所属レーベルだとわかるはず。
亜紀子と仲の悪い圭織はその辺りの事情を知らないのだろう。

 ホームに流れてきた電車は月曜の夜でもお構い無しに出没する酔っぱらい、くたびれたサラリーマン、ホームでキスをするカップル、バイト帰りの大学生、どいつもこいつもすべて収納して次の駅に進む。

 列車内で写真を撮られた気がした。大学生風の女性二人組が携帯電話の画面を悠真に向けながら内緒話をしている。

彼女達は悠真がUN-SWAYEDのYUUMAだと知らずに盗撮をしているのだから、顔を公開すればこんなことは日常茶飯事だと思うとうんざりだ。
何もかもが嫌になる。たまにすべてを投げ出したくなる。

 服に染み付いた圭織の香水の匂いが最も不愉快だった。
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